ドラマに触発されて単行本を24時間で完読←。
宮藤官九郎のドラマも映像として巧妙、10話のなかで完結させるだけの説得力があり、設定も精巧だった。だけど、原作小説もものすごくおもしろい。作品にこんなにはまるの久々な感じがする。
刑事ドラマ色が強く、推理小説っぽく読めてスリルがある。シーンの組み換えや配置は、やはり詰め込まれていたドラマとは違い、1つ1つが順々に綿密に練られながら進んでいく。
泰輔が戸上政行を目撃するのはハヤシライスの試食会の夜よりも前。静奈がみたことになっていた実家店でのプロポーズの光景は、原作では行成が古きとがみ亭で見たことになっている。柏原は自害なんて東野圭吾らしい展開だけど、ドラマでその重大な部分を書き換えたことによってまた違う名場面が生まれたわけだ。AVショップなどところどころにドラマの中に出てきた要素の源泉(ドラマにみられる、原作の要素の名残り)がみえたのも、興味深い。台詞は大体そのまま原作からドラマに転用されていて、「これはあのシーンか」と照らし合わせながら読めたのが、自分としてはよかった。
残念だったのは、ドラマでは喫茶店が賭博問題で摘発された一件が完全にカットされているところ。あれがあることで更に事件解決への筋が太く確固なものになっているはずなのに。確かに喫茶店で出前とかちょっと不思議な点もあったけど、疑念を抱かずさらっとドラマを見れてしまった自分が少しかなしい…。逆に、静奈が実妹ではないことを本人が知らなかったり、柏原を追い込むシーンの後半で弟妹が登場したり、“兄妹”という3人の主人公の絆に焦点があてられたドラマは、少々ねちっこかったかもしれないけれど、原作ほどさっぱり終わらせず、劇的にもっていって正解だったと思う。
どちらも優れた作品だなぁとつくづく。また見直そう。