優しかった気持ち

人がつくったものが好きです。AKB48劇場公演。

佐藤夏希《yuka...》鑑賞メモ。(作品画像有)


以下、鑑賞規定時間の60分のうち2/3をある一点の絵の前ですごした地蔵の私見
参照する他の夏希さんの作品の画像は前回の記事をどうぞ。






Nブロでみた画像よりも色がきつくなかったなー。
個人的にみかん色が好きだから、なんだかとても心許す。



なんか若干色味がおかしいのだけどあえて調整しないので
皆様どうか会場に足を運んでいただいて、その肉眼でご覧になってください。
やはりアートは生。アートは経験。これにつきる。



画材

輪郭線に黒のマッキー(太細兼用)、
背景の水色とピンクはポスカ、
色鉛筆と、マイクの部分は水彩鉛筆かな…?


金の額縁はシンプル、
作品の画用紙のサイズに合ってなく、余白埋めに後ろには赤い画用紙の台紙。
バスルームのポスカ画には額に合うように黒い縁取りが入っているのをみると、即興で展示の用意した感。


今回の展示のための制作ではないし、リラックスして書いたんじゃないかなーっていう軽さ(いい意味)があった。
ただ気がかりなのが、スケッチブックからの転移作であること。



切り離しちゃったんだ…(´・ω・`)


どうしてもスケッチブックを「大切なもの」展示のところに置いておきたかったのかな。
スケブのままでも(だからこそ)自分はステキだと思っていたのでちょっと残念だったりもする。



鉛筆

自画像の目の部分が、シンプルに鉛筆描きだった夏希さん。
ここでは、「スピーカー、マイクの彩色」と「涙」の部分に色鉛筆。「目」も黒の色鉛筆かな?


生々しい言葉をはめてしまうと、粘液。
体の末端、脆く弱い部分、そこからじかに溢れ出るものに鉛筆を使うらしい。



スピーカーに水彩鉛筆をぼかしたような跡があるから、砂時計の上部にだけ、(画材的に)リアルな水分がある。
下部におちたそれは、水気を帯びてはない。



とろんとした濃厚さ、ドライアイスが発する気体のような色の形がある。



ゆかってあんまり泣かないけど







泣くとね

必ず強くなる子なの






だから落ちる涙さえも音に変えちゃう?それが増田有華なのかな?…と



涙にリズムが出るような躍動感出すのが



大変だった(笑)


2011-11-03 10:16:37
http://ameblo.jp/natsuki-sato-we/entry-11067197514.html

※絵文字省略


そりゃ濃密にもなるよな、ゆかのなみだ。


「躍動感」とあるけど、その密度のパフォーマンスってのを考えると、太い歌声だけじゃなくて、
あの独特なテンポのとりかたをするダンスにも当てはめられる、そういう濃密さをもった涙だなーって思います。



《yuka...》

夏希さんがこの絵を描いて最初に公表したのが、上記したブログ。
そこで『yuka...』と繰り返し言っているので、夏希が付けたタイトルはこれということにして。



「...」




ってなんだ?


のヒントはど真ん中。きっと




. . .

これだ。涙なんだきっと。






まるみ

隣のお客さんが「砂時計だけどゆっぱいみたいだよね」と言ってた。
自分もちょっと思った。
本人は、ゆっぱいじゃない、と主張したらしい(隣のお客さん曰く)ので意図したようではないけど。


増田有華」のイメージを表そうとする中で、
夏希さんの無意識に、有華の胸やら体のやわらかい丸みの印象が入り込んだ可能性はあるなとおもう。


あとは、画面いっぱいに有華を表現したかったから、とか。
画用紙の短いほうの幅に合わせて、砂時計の天地をつくるとして画面中心までにめいっぱいの砂時計を描いたら、
あれくらいの弧にはなるだろう。



スピーカーとマイク、目から涙、涙から音符

作品の前でずっと体を左に傾けて眺めてたら、いろんな発見。



涙が跳ねた色の飛沫のさきが丸みを帯びてるなーと思ったら、
そのまま五線譜のほうに跳んでいって、音符になってる。
ぼんやりみてると、五線譜上に散りばめられた黒い音符と、涙のしぶきの丸みが、呼応した形にみえてくる。
ヘ音記号の半弧とかそんな感じしませんか?
青いところからは八分音符みたいな形が大小さまざまに生まれ出てる。
どのくらい配置を計算して意図したかはわからないけど、センスあるなあ。




砂時計

「砂時計」というと【命の儚さ】の象徴として絵の中に描き込まれるモチーフ。
幼少期のこととかStargazerに象徴されるように、命をすり減らすようにして歌に徹して生きている有華を表現するのにピッタリなイメージです。
一方で、“memento mori”のような死へのカウントダウンとして、直接ネガティブな印象と結び付けられがちだったりもする。



だけど、ここでの「砂時計」は、砂時計だけど砂時計じゃない。
砂に変わるのは涙だし、涙は上部の目からあふれ出ているし、スピーカーとマイクが音を鳴らすことをやめないかぎり止まることはない。
下にどんどん涙がおちてって、はねた涙と音符のさらに先には、砂時計のガラスを飛び出して風船がとんでいってて、そこから水色とピンクの模様が放たれて、人々の影に降り注いでる。
ガラスの器が涙でいっぱいになってぱーんと爆発して、歌になるんだろうなー。


バスルームのポスカ画や、塑像の泣く女の色使いをみても、紫・青・緑の冷感色を基調にしているところがあるけど、
ここでは、有華のイメージや好きな色に合わせた赤やピンクやオレンジの暖色が中心。
涙だけど、悲しみじゃないんだなーっておもえる。前向きな感想をおぼえました。





ハート

最後に。


目からまっすぐに涙がおちたところに



揺らめく、真っ赤なハート。
これ夏希さんの意図だろうか。意図でしょう。きっと。




スピーカーやマイクは、有華が表現するための大事な道具。
それが、ここでは「目」も同じなんだ。
目から涙が心におちて、たまっていって、音符になって、歓声をよぶ。
音楽がマイクに入り、スピーカーから出て、表現を続けていってまたくやしいおもいをして、涙をながす…


そんな砂時計が何度も何度もくりかえされる、無限ループ。
数字にならない有華の時間。




くそー。うまいよお