優しかった気持ち

人がつくったものが好きです。AKB48劇場公演。

ウィズ 〜オズの魔法使い〜 梅田彩佳/阿知波悟美【20150309 18:30〜@東京国際フォーラムホールC】

※結構こまかいところメモったのでネタばれ気にする人は注意です。
観てきましたー!∋∞(*´ω`*)∞∈
2012年秋に涙したThe WIZから早いもので3年が経とうとしている今、ドロシーは梅田彩佳ちゃんと田野優花ちゃんのダブルキャストでの再演。キャストも大半が新たなキャスティングですが、またあの演目をステージで観られるのが純粋に嬉しくてチケットをとりました。

美術監修はまたも増田セバスチャンさん。この3年で彼の知名度も急上昇し世界的なビッグになられたから、今度はどんな風に攻めてくるかと思ったらポスターなどでビジュアルを見てたいした変化がなくて少し拍子抜けしたけど、暗転したステージでライトを浴びるのを待つ開演前のセットが変わることなくそこにあるのは妙に嬉しかった。ただいまって気持ち。そして、公演パンフレットには増セバさんonlyの美術に関するインタビューが載っているわけですが、後半のとある記述に一言。セバさん、俺のこと呼んだ?(調子に乗るO型なので放っておきましょう


舞台が始まると真っ白なトトを抱き上げるドロシーがいて、エムおばさんとヘンリーおじさんがいて懐かしさでさっそく涙目。テレビのニュースで嵐の中継やるじゃないですか。あれ映像の最後イブリーン飛ばされていくんですねw今までの上演の時は席やキャストの立ち具合でよくちゃんと観れなかったところでした。ちなみに昨日は5列目の最上手側の席でした(*´ω`*)
嵐に巻き込まれて家族がばらばらになってしまうことが妙に悲しく残酷に感じたけど、やっぱり音楽はかっこよくて好きだな。タラッタータラッター♪ってところ。ドロシーは凍えるような表情をして怯えていました。鏡のドロシーの顔が印刷がぶれたみたいなズレ方をしつつ原色でちかちか変わる映像になっていて、ピエロとか骸骨とか毒々しいものではなくなっていました。
アダパールは「アダパールっ\ぽん!/」ってやらないしポーズも違う。移動の魔法をつかえるアダパールが「どこへだって行けちゃうのよ!」のくだりで挙がった地名は「スウェーデン船橋アンデルセン公園」と大変振り幅のあるものでした。アンデルセン公園はアンパンマンの像がある船橋の公園です。京葉線が最寄りではありません。なぜそうなったのでしょうか。アダパールの頭の中が気になりました。
仲宗根さんの黄色い道も綺麗でした。ジョンテとはちがう美しさ。どちらもスレンダーで整った肉体なんだけど、仲宗根さんやはり女性の曲線が綺麗でドロシーをかばうようにするシーンとかは凛としてて母のように気高かった。

かかしの丘はセットが変わってたよーヾ( ´ ▽ ` )ノ ウエハース×とうもろこし&ポップコーンでした!そういえば最初のお家のシーンでソフトクリーム食べる演出なかったな。すごい余談ですが、ポップコーンって1900年代にポップコーンマシーンができてから街頭の見世物ワゴンが増えて一般的になったそうで(「グレーテルのかまど」でやってた)『オズの魔法使い』が1900年の作品だし、アメリカの象徴的なお菓子だし、畑だからかかしがいても自然なだし、セットにはピッタリだなーと思いました。
かかしさんは純朴そうでチャラくない(笑)ちょっととぼけた感じの、どちらかといえばかわいいかかしさんでした。思えば、生まれぇええたのはああああおーとっといのぉーことぉーさー♪じゃなかった気がする。歌詞が。全然違った気がする。少なくとも歌い方がだいぶあっさりしてたからそう感じたのかな。
まだ数回しか上演されてないからEase on downは手拍子がまばらだったけど、あと1週間もすればおまえら全員曲のイントロ聞くだけでウィズウィズせざるを得なくなるからな、今のうちだぞ、と思った。
ブリキ男さんは、クールで感情がなくて、ブリキっぽいなという印象。ハートがないのがうなずけるくらいにはイライラした感があった。エハライオンはなんか大きくなってた(笑)セリフはちょいちょい変わっていてふくろうホーホーいうくだりもなかったけど、複雑な一人っ子の家庭環境からの流れは一番会場にウケてた。
もんちゃんは、客席通路に出るときは“あんちゃん”になっていました。かわいい。イブリーンはふざけたこと全然言わなくて、愛嬌みたいなものがない徹底的な悪役でした。Mr.ウィズはフェイク出ない以外は安定の感じでしたが、「大阪…京都…こうべ(頭/神戸)を上げよ」はそんなところにギャグ挟み込んでくるんかいって笑いましたww
グリンダは激変。フランクになってた!歌や雰囲気には気品あるんだけど、アダパールと話すところはかなり打ち解けてラフになっていました。その後のBelieve in yourselfは、2012年公演の時のようなきらびやかで綺麗な魔法じゃなくて、彼女のそれまでの人生によって導かれるような親しみを感じました。グリンダが温かく見守るような笑みでドロシーを見下ろしているから、そろそろおうちに帰りたくなる。


ドロシーは声が高すぎてセリフ聞きとりづらいことがちょっとあったけど、48やDiVAですら見たことのない梅田彩佳さんがそこにいた。Soon As I Get Homeでいきなり驚かされた。小さな体の奥から歌声がホールの遠くまで響いていて、堂々としてて透き通っていて、人ってこんなに変われるんだってくらい。Ease on downは仲間が増えるたびに跳ねまわったりとても楽しそうにしていて、かわいかったな…あれはドロシーだね。梅ウィズの舞台観に行ったんだけどあれはきっと梅田さんじゃなかったんだね。
もっとも印象的だったのはカリダから逃げ切った後、Be a Lionに続くくだり。自虐するライオンにドロシーが放った「永遠なんかない!」はとてつもなく響いた。たった一言だけど怒ったように早口で、シャープに突き刺すその一言は平手打てを食らったようだった。自分でも信じられないくらい涙が出てびっくりした。その瞬間だけ、それまでドロシーだった少女が「梅田彩佳」にはっきりと見えました。こんな言葉じゃ語りつくせないような無限なものがあの言葉にこもっていたと思います。すばらしい音楽でした。1ミリでも梅ちゃんを好きな人は必ず観るべきです。
後半でウィズを説得するところもそう。ここは逆に有華ちゃん(と思われるドロシー)はまくし立てて嘆くようだったけど、梅ちゃん(と思われるドロシー)はあからさまな怒りというよりは理知的に落ちついた説得にみえたし、装飾の多い長いセリフは変わっていないけどするっと入ってきて聞きとりやすかった。そしてその演技はもはや演技ではなく梅田彩佳そのものでした。梅ちゃん(ry)は言葉にものすごい力があって、ライオンに「小さいママ」と呼ばれてるけど、本当にママが子どもを諭すような優しさがありました。
そしてラストのHome。3年前の最終オーディションからは想像がつかなかった声量と安定感があって、あの小さな体がステージの真ん中で強い強い光をあびて風を受けていました。風なんか吹いてるはずないのに、きっとあれは彼女のエネルギーですね。仲間3人がいなくなってドロシーが1人歌いだす、この世界滅びても行く先はわかってる…の歌詞を歌い上げる彼女は、とても真剣でその厳しい表情がこわいくらい。デビュー当初から、焦らずに時間をかけて何度も立ちあがり続けた2015年の彼女だからこそそこに立てたのだと思います。私は昔から彼女を見ていただけで推しでもなんでもないから簡単に言ってはいけないけれど、梅田彩佳に無駄な時間はひとつもなかった。かかとを3回鳴らして、ステージセットが回転してお家で心配してるおばさんとおじさんとトトを見て、愛する義娘さん帰ってきましたよ…という気持ちでまた涙。
最後のあいさつで魔法がとけた梅田さんが喝さい浴びるステージに戻ってくると肩をすぼめてちょっと照れくさそうにして見えた。カーテンコールで出てきてひっこむたびに袖のところで深々お辞儀をしている梅ちゃんが健気で印象的でした。


今のWIZをみて、ある意味では2012年公演はキャスト性に依拠するところが大きかったように思えた。そして今回のウィズは、いい意味でキャストの個性を気にせず楽しめる部分が大きかった。歌や台詞の発声にそのアーティスト特有の癖が出てなかったから、歌詞とか言葉をきちんと聞き取ることができました。ストーリーは小ネタを挟むことも少なくたんたんと進んでいくのが物足りないような、でも2012年WIZのような"身内感"がなかったのは純粋に舞台に入り込むには良い環境なのかなとも思った。
あの頃あったものがない分あの頃なかったものがあったから悪い印象は受けなかったし、むしろ48のメンバーでこそあるけどそれ以外は大好きな増田有華ちゃんのイメージで思い出になってるこのミュージカルを心の底から楽しめた。楽しめるかな…という観劇前の戸惑いが、観劇後の感動を増幅させたように思います。この「The WIZ」という演目、この演目がキャストを変身させる力と彼らが放つ凄まじいエネルギーは、それ自体がとても魅力あるものなんだと気づくことができたからです。

グリンダの歌が終わって、お姉さまの手を引いて袖にはけていくアダパールが「今日はお姉様の大好きな土間土間を予約しました」と言った時、3年前から変わることなくオズの国はみえないどこかのステージの上にあったのかなと思いました。有華ちゃん(と思われるドロシー)も魔法が解けて今またどこか違うところにいるんだな。ドロシーは1人じゃないですね。
忘れずに留めておきたい気持ちでも月日が経つとぺったりと貼りついて気にとめなくなってしまいがちだけど、このウィズという最上級のハッピーな世界にくることでそれをまた思い出すことができました。ありがとう。