9つの窓

国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」がAKB48とコラボレーションとのことで、オムニバス映画「9つの窓」を観てきました。
1作10分のショートフィルムが9本立て続けに上映されるという、私は今までに観たことのないスタイルでした。
10分ってアニメより短いしどうなるんだろうと思いましたが、実写映像なだけあって圧倒的な情報量があり、想像したよりもしっかりと伝わってくる10分間の映画になっていました。
48メンバーが各作品に1人ずつ出演しており、みんなアイドルという職業として演技を全うして頑張っていたのであまり追求はしませんが、当ブログなので監督や作品の制作側については辛めのことも書きますのであしからず。
なお、はっきりとしたネタばれは避けますが、作品によってははっきり書いてしまっているものもあるので、これから映画を観るなどでネタばれを気にされる方は閲覧注意でお願いします(特に「お電話ありがとうございます」「赤い糸」と「candy」は細かく書いた自覚があります)

  • お電話ありがとうございます 北原里英】 …監督:名倉愛 脚本:隈部雅則
  • 先客あり 入山杏奈】 …監督:小川和也 脚本:掛川浩司
  • さおり中西智代梨】 …脚本・監督:廣瀬陽
  • レミューテック 江籠裕奈】 …監督:中村公彦 脚本:春名功武
  • candy木崎ゆりあ】 …監督:名倉愛 脚本:山内晶
  • 回想電車 宮澤佐江】 …監督:比呂啓 脚本:隈部雅則
  • Dark Lake兒玉遥】 …監督:中村公彦 脚本:平沼豊
  • 漁船の光 横山由依】 …監督:廣瀬陽 脚本:奥西隼也
  • 赤い糸茂木忍】 …監督:曽根剛 脚本:吉原れい

9作どれも個性がばらばらですが、若い女性に付与したい特性として「恋愛的苦悩」と「生死で揺れる非現実な妄想/妄想的現実」みたいな2つは大きく、ほとんどの作品にあったように思います。
まず、恋愛でもめるというところで女性特有のヒステリックみたいなものが描かれてるのが「さおり」と「回想電車」。いつでも女が男を取り合って、男は悪くないんですよね。とても都合がよろしいようで…。智代梨がもはや六条御息所みたいになってたのには笑いましたがw迫真の演技でしたね。回想電車は発想がおもしろかっただけに、もっと違う“回想”を入れてポジティブな終わり方で観てみたかったな。佐江ちゃんがもう社会人の役…前に観た時はJK役だったなぁ…(※高校デビュー(*´ω`*))。見知ったメンバーが制服を着ていない役を演じていると、AKBの時が流れていってるのをひしひし感じますね。少女は一瞬の出来事だから、こういう作品の形で残るっていうのは有り難い。
取り合うといえば「Dark Lake」もグロかったですね。演劇部でヒロインの座をかけた命の奪い合いが起こりますが、心理描写やシチュエーションが一番よくわからなかった…。林の緑と血の赤を並べたかったのだろう。バトロワ的な趣味。死とか殺人とかシリアスで終わらせようとするところに、若いなぁっていう厨二病的なものをどうしても感じてしまう。はるっぴのセーラー服が似合っていて優しい女の子の役だったし、勿体ない。
先客あり」は先にパンフで読んでたのが失敗だったwあらすじにオチの部分まで設定のように書かれていて、読んだ上で見ると、これで終わっちゃうの?って物足りなさがある。10分におさめるには難しいスケール、設定が複雑だったのかもしれませんね。ダムと人物の構図とか、空撮で切り取られたダムとか道路の車とか、真上からの無機的でぐらぐら接近するアングルとか、撮り方が工夫されてて面白かった。そんな頭がおかしくなりそうな映像の中にあんにんという美しい摂理を持った人物がいるのがよかっただけに、パンフのネタバレが実にもったいないw運営の方、パンフ内容の改編をおすすめします。

漁船の光」も映像綺麗だったな。空がとても綺麗。朝ドラや青春ドラマなんかも兼ねてから思ってるんですが、なぜ地方の町や村ばかりを舞台にしかたがるのでしょうね。首都圏住まいにとっては、都会には作品的魅力がないのだろうかとやや不満を覚えるところでありますが、漁船の光についてはあの綺麗な海と空が観られるなら、そうあることに理由があるのでよかったなと思います。
これを「9つの窓」の看板作品にしたかったのはわかる。だがしかし横山さんww品物受け取ったそのままの手で店出ようとしないよwwとつっこみたいところはありましたが、最後が切なかった。それが現実なんだよね。いわゆるドラマのような劇的な展開はそこにはなく、ショートフィルムとして美しかったです。
田舎が舞台というと「レミューテック」も島に引っ越したJKの話ですね。えごちゃん。何でもかんでも事故を起こすなとは思うんですが、事故というヘビーな展開の割にライトなオチだったのでまぁこれはこれでいいのかなとwレミューテックが何なのかわからないままっていうのは上手いですね。結局レミューテックって何なの?って、ゴロのいい言葉だけが残って気になる。あと表紙の松村がさりげなさすぎて笑いましたwww


未来

9作を通じて、自分が見たことのない過去の事実とか、たどりついてみたい理想が描かれてるなぁと感じましたが、それと同時に「未来」についてのお話が最初と最後にきていたのが印象的でした。監督達が真正面から取り上げるには大きすぎて小恥ずかしいテーマな気もしますが、AKBというアイドルの少女たちと重ね合わせることで、素直に向き合えるものなのかなと思ったり。
1本目のお話のきたりえの「お電話ありがとうございます」は毒のあるエンディングではあったけど、夢見がちかもしれないけどああいうことが実際に起こったらおもしろいだろうなと思うし、起こったらいいのにとも思うことだからわくわくできるし、コールセンターのエースの船橋さん(きたりえ)は最後まで真摯な対応だから見ていて気分がいい。彼女が無事社員になれることを祈ります。彼女は電話口で自分が将来結婚する相手の名前を知るチャンスに恵まれますが、彼女の判断で「やっぱ聞かないでおく」と断ります。電話口で教えられるタイムパラドックスを、自分から断るんです。ここで、なんだか都合よくない?と観ていて感じましたが、最後はポジティブな毒というか、世にも奇妙な物語みたいな感じで好きな展開でしたw未来はわからなくていいんでしょうね。

そしてチーム4箱推しの私としてずっとずっと待ちわびていた茂木さんはラスト9本目!期待のホープは一番最後、「赤い糸」。

きたりえ作品と茂木さん作品にはどちらもイラストが出てくるけど、赤い糸のほうがオープニングと劇中でイラストが出てくる意味がきちんと存在してたし、夢落ちに繋がるキーにもなってたから使い方が上手い。あと沈黙が心地いい。映像の明るさ、午後の教室の懐かしさも手伝っているのはあるんだけど、誰もが経験したことのある学校だから想像がしやすくて、すっと入っていけた。茂木さんがそもそも美人だから、そこに赤い糸が見えて、ブレザー制服の茂木さんが窓際の席で机に突っ伏して眠っていて、その指先に糸と同じ赤の蝶々がとまってるんだから、そりゃもう最高美しいですよ(急小並感)。
外階段、踊り場とか個人的に好みのシチュエーション!高橋が「たくはち」に聞こえてちょっと笑ってしまったがwそして彼は確かにいわゆるイケメンではないしちょっとがっかりな感じの男子生徒ではあるが、未来へのヒントとして赤い糸が見えて、その夢から覚めたあずさちゃん(茂木さんの役)の今の見え方が変わって、未来も変化していく。たとえそれが夢だったとしても。三宅唱監督の「Playback」を思い出しました。こんなちょっとした意識の変化で全然違う方向に進んでいくからおもしろいですよね。
授業中に夢から覚めた後、ちらちらとたくはち(たぶん高橋)の方を見る視線が、誰かに見られてるのを気にするようにおっかなびっくりで、彼のこと気になってるあずさちゃんがものすごく可愛らしかったです…。あのシーンの演技素晴らしかったです茂木さん。

さて。私が一番好きなのは「candy」でした!
まずゆりあの演技。冒頭でアイドルとして演技を全うとか書きましたけど、木崎ゆりあに関してはものすごく自然で、普通に若手作家さんの映画出ててもおかしくないような演技でした。役がとても可愛らしい彼女だったから、ヲタフィルターみたいなものもあるのかもしれませんがwwアイドルの演技ではなかったというか、テレビドラマも何本も出てるしそのひとつひとつを大切にこなしてきただけあって、俳優としての芯を感じました。

そして脚本、映像も素晴らしかった。不思議なキャンディーを舐めると、その効力で酔ったときみたいに甘えてくる可愛らしさをまといながらも、ゆりあの演技がアイドルっぽくないので普通に可愛い女の子でした。上手い。全体として準太という青年の目線で描かれていて、主人公を演じるのがAKBメンバーではないという点も他の8作品との大きな違いですが、その持ち味が最大限に活かされた切なさ。ちょっと泣いた。
ゆりあとその彼氏・旬の恋のキューピットだった準太は、付き合って何周年という節目で2人が開く自宅のパーティに招かれるのだが準太はじつはゆりあ演じる野乃子ちゃんに思いを寄せているという設定。準太が激安の殿堂で購入した惚れキャンディーを野乃子が食べると、2分間だけ甘えたちゃんに変貌してお酒に酔ったみたいに好き好き言ってくる……という、なんだその萌えシチュはというくらいには鉄板な設定なのに、次第に誰もが気が付いてしまう途轍もない切なさ…。
交際一周年のパーティの時は、野乃子が偶然食べてしまって準太は単にキャンディーの効力を驚きながらも楽しむんですが、二周年目に同じようにキャンディーを試した時に「僕のどんなところが好き?」と聞くと、準太にはピンとこない「腹筋」という答え。三周年の時にはもっと多くの好きなところを聞くのですが、それはどれも野乃子がおもう旬の好きなところばかり。言葉の上で「しゅんちゃん」が「じゅんちゃん」に置き換わっているだけ。最後には「ののちゃんが好きなのは僕じゃないよ」と、準太は重ねられた野乃子の手を自分から離し、パーティを始める前に部屋を出ていきます。その終わりの映像と音、好みでした。旬は最後に声で出てくるだけです。
たとえ好きと言ってくれても、心の伴わない幻覚の好きがこんなにも辛いとは。こんなことがあったら、こんなものがあったらいいなっていう理想が本当に訪れると、どうしようもできない現実の壁の分厚さを感じるんですね。そんな「もしも」を覗くことができた、とても面白い作品でした。私の好みにドストライクだったのもcandyでしたが、作品として素晴らしいと思ったのもcandyでした。


いろいろ書きましたが、9作もありますから人によって好みの窓が違って、いろんな見え方(これが窓っぽい)や感想があるんですね。それもまたオムニバスならではというか、映画祭で上映されるにはぴったりな形式なのかもしれませんね。皆さんはどの“窓”が好きですか?


この「9つの窓」ですが、なんと上映が今週の3月4日(金)までなのです!もう平日しか残っておりませんが、気になる方は仕事帰り・学校終わりに最寄りの映画館へ!あとネタバレがあったとdisりましたが、インタビューやオフショット、作品情報が満載でわりと綺麗にしっかり作られているので、900円のパンフレットは買って良かったと思っていますw劇場でまだ販売していたらそちらもぜひ。
AKB ShortShorts project 映画『9つの窓』 OFFICIAL SITE