優しかった気持ち

人がつくったものが好きです。AKB48劇場公演。

フロンティアワークス主催 劇団た組。番外公演「悪役令嬢後宮物語」【20161001 18:00〜 @サンモールスタジオ】

篠崎彩奈ちゃん主演の舞台へ、えりころと連番で行ってきました!
先日「bare」を観劇してきたシアターサンモールの兄弟会場で、キャパ100人ほどの小さな劇場でした。
座席がおもしろくて、ステージの下手側にも2列程度の席が設けられていたので、その最前列へ。本当にステージを真横から臨む席なんですけど、正面エリアの席から見て横向きのまま話が進む場面や、こちらも正面であるように振る舞ってくれることが多かった。客席通路の段差を花道のように使って観客入口付近の幕から演者が入ってきて、ステージ袖は下手だけ(ちょうど下手席の真横に通路)。とても小さな劇場でしたが、逆にひとりひとりの表情が観やすくておもしろい観劇ができました。


篠崎彩奈 (AKB48)、金澤有希 (GEM)、白井那奈、梅本静香、ももぼーいカスガ、パンプキンズまりこ、菅原雅芳、中込幸輝 (EMBLEM)、清水修平、南 杏果、永瀬まっぷ、星 浩貴、結月みおな


原作 : 涼風『悪役令嬢後宮物語』(フロンティアワークス刊)
脚本 : 角畑 良幸

物語*1
「王国の悪を牛耳る、裏社会の帝王」と呼ばれるクレスター伯爵家。そんな悪名高い一家の令嬢、ディアナは本当は心優しい少女なのに、人の心を弄びそうに見える美貌――“悪役顔”のせいで、周囲から誤解されてばかり。そんな彼女がある日、側室として後宮入りすることに!
いきなり国王に嫌われた上に、派閥争いのトップに祭り上げられたり、刺客に命を狙われたり……と勘違いされてばかりのディアナ。「本当の私を見てくれる人は、いないのかしら?」誤解にめげずに奮闘する令嬢ディアナに、幸せは訪れるのか――!?


小説家になろう」という小説投稿サイトから単行本化されたいわゆるライトノベルだそうです。こんなストーリーのさわりでタイトルが「悪役令嬢後宮物語」ときたので、重苦しい設定(イギリス貴族のどろどろ劇っぽさ)かなーとだいぶ身構えていたのですが、初日が近づくにつれてコメディタッチであることがわかってきて、実際劇場では大いに笑わせていただきました。笑いが起こるようなアドリブの場面だと、思いっきり演者の素になっていたり。あやなんがこの春出演した「マジックトレードセンター」とは真逆の雰囲気の劇で、今年は比較的ずっしりした内容の観劇が続いていたので肩の力を抜いて楽しむことが出来ました。

「観劇の手引き」という劇中に出てくる語句や階級の解説用紙は配布されたのですが、それにもチラシにも出演者さんの配役が書かれていなくて、公式っぽいサイトも見つけられず注釈に付けたニュース記事から上の出演者を引っ張ってきたレベルwwなぜこんなにも情報が載っかっていないのだろう。

きれいなお嬢さん方

あやなんも主演のはずだから、ダブル主演ってことでいいのかな?
主人公ディアナ・クレスターを演じるのはGEMの金澤有希さん。AKB元10期さんですね(まりなぁ…)。あやなんがSNS各所やAKBメールで「ゆうきりん」と書いてくるたびに死にかける私ですが(?)、真っ赤なドレスがお似合いで、ツンと尖って頭のキレる雰囲気のディアナ嬢にぴったりでした。侍女であるマリもいい味出過ぎてましたね、エルグランド王国のしのぶさん。ディアナが後宮に入り、いきなり最も名誉ある「紅薔薇の間」に住まうことから物語が始まります。

白井那奈さんは、その次にえらい「牡丹の間」の令嬢リリアーヌ・ランドローズです。こちらは青いドレス。他の令嬢の足をひっぱったりいじめることで自分の地位を保とうとする役どころで、冷ややかな目線とこわばらせた艶やかな悪意ある声でまっとうされてました。が、Twitterなどでオフの写真を拝見すると全然人相が違って見えてちょっと驚きました。TLによると推し変民が多いらしい(?)

ディアナは紅薔薇に就いたことで、エルグランド王国陛下であるジュークの隣に立つ第一夫人となります。令嬢たちは、経済にも知見のあるディアナにつく革新派と、リリアーヌのような保守派に対立している。そんな中で一際異彩を放っている令嬢が、あやなん演じるシェイラ・カレルド。父を亡くし義理の父に冷遇されなかば売り飛ばされるように側室に入った、無名のカレルド家のシェイラ。

シェイラ!!!僕らのシェイラたん!!!!!!!(落ちつけ
卑劣な扱いをされてきて気持ちを閉ざしてしまっているシェイラの友達は、手乗りの鳥のベッキー(インコ等身大のぬいぐるみ)。王宮の庭でベッキーとお話してたり、パーティでも人の輪に入っていけない。
この劇はステージの真ん中で物語を進める傍らで、また別に他の演者たちが暗がりに長く待機したままの演出が結構あったんですが、庭で陛下とお付きの者がボケとツッコミを白熱されるシーンでは、シェイラは舞台の縁に座ってずっとベッキーと会話してて、ネイルをツンツンさせてたりして可愛かったです。と思いきや、陛下が会いにくるようになると、また来てくれるかなと不安を募らせるシェイラと、冷静に考えてものを言うシェイラとで、ハイパー二重人格ひとり劇が始まったりしてwwあれは笑った。あれは清楚というより妄想少女

シェイラ演じるあやなんは物語のところどころで独白の役も務めていて、年譜的な小難しい内容の長台詞。笑えるシーン(陛下がものすごいテンションでジブリクイズ出した後とか)と深刻なシーンの描写の落差がとてもある中で、場面の空気を切り替えるようにその独白が挟まれることしばしば。さっきまで笑ってたのからがらりと気持ちも仕切りも切替えなければいけない役で、大変だっただろうなぁ…。覚えた独白の3分の2をカットされて嘆くこともあったらしい。どうしてこんな大役をシェイラにやらせるんだろうと考えもしましたが、キャストを見ていると、見栄えがしてかつ頭の冴える人員として、適役はあやなんだなと思いました。華やかな側室ではないし、役的にも小回りを利かせやすかったのかもしれません。

劇はシリアスと笑える部分の緩急がはっきりしていたので、のめり込むところはのめり込んで観て、笑うところは笑わせてもらいました。ディアナの一挙一動は政治界でうまくコマを進めていく貴族の頭脳ゲームみたいなところもあるから、シェイラの独白や、解説っぽい場面になったら頭を切り替えて状況整理しながら観ていく。
一方で、シェイラを楽しませようと躍起するジュークの子どものようなハイテンションが本当おかしくて()実際ああいうヘンな王子とか居たんだろうなぁ。ジュークの演者さんがジブリ映画が大好きらしくて、そのワンシーンを再現しながら本当に意味のわからないクイズ()を出すシーンなど、普通に回答者しのざきあやなさんになっててwwこの回の回答はすべて「ゲシュタルト崩壊」でしたwwあやなんもこの言葉を覚えたらしく、最後の3問目で見事に正解しましたw

しかしまぁここまでアドリブに支えられたコメディだとは思いもせず、小説の趣がどの程度生きているかというと原作を読んだことがなかったので一体どんな原作なのかと謎でしたが、チケットの特典で頂いた原作者書き下ろしSSを拝読すると、しっかりとして気品すらある文体の中で登場人物のキャラクターや台詞によって笑える展開になっているようでした。あくまでもSSなので作品の片鱗でしかありませんが。その設定も来場者特典としてふさわしく、舞台への先入観に影響せず、まるでディアナ、シェイラ、陛下も同じ劇場内にいてこれから一緒に観劇をするかのように描かれていて、サイトから単行本化されるだけあり技量ある作家さんなのだなと思いました。

メッセージ

そんなギャグ劇でしたが、ただ笑えるだけでなく、原作あるいは脚本にはしっかりとしたメッセージも盛り込まれていたように思います。
劇中、陛下とシェイラが庭で初めて会うシーンの最後には、シェイラはあたりをを見まわし「文春がこわくて…」とメディアの目を気にします。ここではギャグで笑いを誘いいます。その後、ディアナの悪い噂に疑問を感じはじめた陛下が愛しのシェイラに訊ねると、彼女は「噂などに惑わされず自分で見たものを信じてるように」と陛下に助言します。シェイラは、パーティの夜に自分を気遣ってくれて、リリアーヌにいじめられた夜には自分を助けに入ってくれたディアナが、策略や見識があり頼れる存在であることを知っていたからです。
そして、陛下がシェイラに告白をするシーンでは、「自分がその立場でその行動をしたら皆がどのように思うかをしっかり考えろ」と陛下はいろんな人から助言されて、側室の解散は撤回します。皆から見える立場の人間は、いつどこの部屋に行った、誰と会ったという一挙一動まで見られてもおかしくなくて、ある立場の自分がその行いをすることについて熟慮しなければいけない。これは梅本さん演じるルリィ宜しく、ゆとり世代の自分にも刺さった()

耳に聞こえたものを鵜呑みで信じるな、目に見えた肩書に惑わされるな、ってスキャンダルの心配と常に隣り合わせの芸能活動をさせる方々にはなおさら気持ちの強いメッセージだと思います。そういう物を見極めることができる眼を持てる人でありたいですね。もしかしたらエルグランド王国に馳せた古の堅苦しい社会で生きた人々にも、作家から伝えてあげたいエールなのかもしれません。


↑写真左奥の席で観ました!おもしろいステージ


終演後待機せよという風のうわさを聞きつけたえりころ先輩とともに客席で待っていると、演者さんがステージ前に出てきてくださいました。
「マジックトレードセンター」の時は1人で観劇してたので待たずに帰ろうと階段を下りたところ、1Fの楽屋から外に出てきた贈り物の小さな花の籠を持ったユムナんが、後ろで他の人と話しているスタッフを待つようにゆーっくり時間稼いでじらすように歩いてるのを目撃してしまいそれがあまりに可愛すぎて&その近さに頗るびっくりしてそそくさと帰ってしまったのですが() 今回は謁見列に並びました(´ω`)握手会いくよ楽しみにしてるからねシェイラたん

今年の6月から活動の幅を狭めて療養しているあやなん。AKBメールをみると気持ちが不安定になりがちなのが伝わってくるし、完治がはっきりする病気ではないそうだから、これからもその都度様子をみて取り組むことが続くのだろうけど。
また舞台に出てほしいなぁ。もちろん劇場公演も待ってるし、ゆいりちゃんと一緒に初恋泥棒やってほしいけども!できることから少しずつ。負けないで…!

*1:animete Timesのニュース記事から転載 http://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1470718778