はてなブログに移行して初めての記事です(´ω`)よろしくお願いします。
今年2月の「猫犬」ぶりにあやなんが立つ舞台でした。年明けには猫犬きっかけで「篠崎さんで」と主演オファーのあった舞台も控えていて、今ノリノリのあやなんです。
会場は築地本願寺内にあるブティストホール。こんな場所があるなんて…。開演まではお寺を散策したり、信号わたってすぐの築地市場でおなかを満たしたり。12月の週末ということもあるのかかなり賑わっていたし、雰囲気的にももう年末だなぁと気持ちがホクホクしました。
以下、感想です。ある程度辛いことも書きますし、ネタバレふくみますのでご容赦。
【ダイヤ版】
鈴木寿永吉、滋野由之、仲村修夫、五十嵐勇紀、いざわこうへい、井川達也、大山剛、原めぐみ、牧野美千子、都合マリ子、亀石侑里、松田侑子、asAhi、瀧澤優子、大屋海、神谷奈津子、夏川未羽、玉木文子、森井愛音 / 石橋正次 / 山本哲也 / イルファ / 野崎徹 / 一谷伸 / 新大久保鷹 / 田村 / 中馬さくら / 篠崎彩奈 / 高橋淳子 / 相原愛作・演出 是枝正彦
舞台の舞台
スポットライトというタイトルとは裏腹に、この演劇は「舞台の楽屋裏」が舞台です。
ステージ奥にはクロゼットや冷蔵庫、ステージの手前には壁沿いに並ぶ鏡とメイクスペースを模した長い簡易な机が置かれ、楽屋を作っていました。鏡をのぞき込む演者の顔なんて見たことないし、おもしろい空間の作り方。オフの時間を逆に舞台にしちゃおうっていうのがおもしろい。
ステージ上下には小さな空間があって、下手は常に座長室、上手は常にこの舞台の案内役になる歌手の女性が出てくる舞台になって、下手は花道みたいに伸びた形をしていて、上手は少しせり出していました。この日は最前列の上手端で鑑賞でしたが、うっかりするとステージに荷物置いちゃいそうなくらい近かったw
この劇の時代設定は「今から30年くらい前、携帯電話もなかった時代」という説明だったので、ちょうどバブルの頃だったのかな。歌手の方はパブなんかのショーで歌っていそうなくらい、とにかく華やかでした。あやなんが演じる「あやちゃん」は劇団の若いメンバーの一人で、馬場くん(やっちゃん)と付き合ってる設定。
お話としては、開演50分前の女性楽屋、男性楽屋、座長室が描き出されます。本番前に人が行ったり来たり、伝言しにきたり、物を探しに来たり…。ぶっきらぼうに部屋を去って行ったり、唐突に人が現れたりよくわからない話をしたりしますが、それもこの劇を50分前からの時系列で3場面を順番に観ていくと、そういうことねと納得ができる。
ただ、場面転換の暗転が後半になると回数が増えるし、3回のタイムトラベルの往復は疲れたw 座長室が下手側に常設されているけど、暗転下サイレントで演じたり静止したりっていう演出にはしなかったんだなと不思議に思った。あるいはこの演出も時代なのかしら。
舞台の案内が出た時から、出演者の年齢層が高めなことについて声がちらほら聞こえましたが、この時代(しかも楽屋の「オフ」の空気)を描くにはこのキャスティングじゃないと時代感は出ないんだろうなと思いました。台詞や登場人物の振る舞いのベースにある男女観もまた時代という感じだったけど、悪い感じはなかった。時代。
コメディしかも楽屋がメインなので、結構な際どい発言も飛び交ったりしまして、エッジの利いた笑いと言いますか、劇団の裏話としてありそうな雰囲気というかw
「昨夜座長がみどりさんをタクシーに押し込んだ。方向的には目黒へ。きっと目黒エンペラーだわ…」→「みどりさんダブルキャストだから少しでも自分が演じたいからベッドの上でお願いしたのよ…」「目黒エンペラーなら馬場君とあやちゃんも行ったことがあるらしいよ」→次の瞬間その場で「座長みどりさん馬場君あやちゃんが4人で乱交パーティ!?」となったリレーはさすがに笑いました。こうやって伝言で話が歪んでいくのね…。
座長室のシーンで明らかになりますが、団員には隠しているけど座長とみどりさん、実は叔父と姪で親戚同士という事実。でも知らない人にはそういう関係に見えてしまうという罠。こうやって見えない部分を、目に見えた現実とかけあわせて勝手に解釈して、勘違いしたまま事実と受け取ってしまうのってちょっと虚しい…と思った。
で、断片的にそのリレーを耳にした馬場くんには「座長とあやちゃんが…」と聞こえてしまい、カッとなってしまって座長殴っちゃったり…。鳩サブレの缶のぼこぼこ具合がその力の強さを物語っていました、鳩サブレ…。この流れも何度かリフレインして、そのたびにあやちゃんが「座長はあなたの顔を見てないから!」とフォローを入れるって流れもおもしろかった。さすがコメディ。
「やっちゃん…これ。」
このブログなので篠崎彩奈さんについて書きたいのだけど、まー!いい演技!AKBメンバーから暴露されるあやなんの舞台裏としては、本番前まで「やばいできない」と言ってるダメダメエピソードを耳にすることが多いですが、この方がすごいのはステージでは絶対ヘマしないところなんですよ。セリフはばっちり言いますし噛まない。
男性楽屋で、座長が居合わせたあやちゃんと一緒に舞台の場面を演じます。病を患って余命の短い父(祖父だっけ?)とそのことを知らない娘がバス停にいて、父が通りがかりの出前持ちに時間を聞いて「10時5分だよ」と答える、別れのシーンの再現。出前持ち役の人はこの親子の設定を知ってるが故にものすごい感情移入してしまって、泣きながら時間を答えてしまうからその点を座長から注意を受けます。
顔をくしゃくしゃにして涙を答えながら「10時…5分、だよ…」と答える出前持ち、すごい剣幕で演じていたんですけど、あやちゃんは彼の感情がそのまま鏡に映ったみたいに目をウルウルにしてたんです。はいカット!で座長が注意し始めるときちんとあやちゃんに戻るんですけど。共演の牧野美千子さんが「声の揺らぎがいい」とあやなんのことを書いていましたが、感情の揺れが声や表情に出るところがとても良い。
そして何より、やっちゃん(馬場君)との関係がとてもかわいい。
若い女子のグループの中で楽しそうにやっちゃんとの恋の話をしているあやちゃんも、女子女子しててかわいいんですけど、何よりも私が度肝抜かれましたのは、自分の衣装にはかけないアイロンをやっちゃんが着る衣装のYシャツにはかけてあげて、それを男性楽屋に入って「やっちゃん……これ。」と差し出すステージ奥の些細な演技。
楽屋に突然入っていって半歩脚をつっこんで、手に持ってきたYシャツを馬場君の胸の前につきだして「やっちゃん…これ。」と言う時の、惚気や恥ずかしさを押し殺した感じがたまらなく可愛らしかった。AKBINGO!の収録を終えた村本さんに「篠崎彩奈の元カノっぷりが輝いていた」*1と称されたことがありましたが、あれだ。あやなんから醸し出されるあの彼女感は一体何なのだろうか…。やっちゃんと二人で目黒エンペラーに行ったらしいという劇中の事実よりも、何気ない場面のほうがずっとドキドキしました(?)。
あと、あやなんと仲良しの松田侑子さんも明るいキャラクターで観ていて元気が出ましたが、役で着ている青ジャージ×パーカーがとても似合っていて、本当にこういう劇団員の人いそうだなと思いましたwあやちゃんの上下ピンクのジャージ(スウェット?)も着こなせている感じ。あれは私物だったりするのかしら…?とても楽屋感出てる。
スポットライト
終始コメディーだけど、座長が語る芝居をしていたある男の話に舞台のタイトル「スポットライト」がかけてあり、深い話になっていました。連絡船に乗った男が酒に酔って海に落ち、灯台の灯りをめがけて懸命に泳いだが溺れて死んでしまった話。端っこの役ばかりだった彼には、灯台の灯りがスポットライトを浴びているように思えて、嬉しくて泳ぎすぎてしまったのではという解釈…。
そしてこの舞台の最後は、本番後楽屋裏から外に出てきた団員たちが一言ずつ何か言って帰路に着く…というものでしたが、お金に困っても結婚できなくても芝居をやめられないよねという、演劇にすべてを注ぐ彼らの熱いメッセージでした。舞台裏、役を演じていない楽屋の団員たちを描いた物語にスポットライトを宛てた舞台が、この「スポットライト(Back Stage Story)」という演目なんですね。
座長が最後恋人に別れを告げられて悲しむシーンがありましたけど、どんなに苦しい生活やつらい境遇でも、こうやって好きなことに打ち込めることができるって立派な「しあわせ」だなと思いました。というか、ある種の人たちってそちら側を選ばないと「しあわせ」を満足に感じられないんですよね、きっと。
ライトの当たるところと当たらないところみたいに温度差も躁鬱もあるけど、それでもそのことばかり考えてその話ばっかりして、夢中になっちゃうんですよね。そういうものって演劇でもどんなものでも、人生を豊かにすると思います。
12月の築地で出会うのにぴったりな舞台だったなと思います。すごい笑ったし、楽しかったです^^ありがとうございました。