"お出かけ"した推し*1が主演枠というとんでもねえ舞台でありながら、「1回観られれば良いか」とヌル様もびっくりのぬるい気持ち*2でチケセン投げたところ全落。絶望していたところ声をかけていただき&忘れてたキャン待ちが当選で、最後の土日に28日昼公演、29日千秋楽を観ることができました。感謝。感想は2公演一緒に書いていきます。
<荒地工業高校>バラ:向井地美音、クインビー:武藤十夢、ゾンビ:福岡聖菜、クロウ:茂木忍、ドラゴン:岩立沙穂、ハイエナ:佐々木優佳里
<嵐ヶ丘学園生徒会>タウゼント:小田えりな、イーリス:山内瑞葵、シュナーベル:下尾みう、エルガー:千葉恵里、リヒト:北澤早紀、シャッテン:西川怜
<アンサンブル>長友彩海、稲垣香織、黒須遥香、佐藤妃星、多田京加
<日替わりゲスト>8/28 13:00 宮崎美穂&大家志津香、8/29 18:00 齋藤陽菜&藤園麗
<全公演 前説&前座パフォーマンス>稲垣香織、黒須遥香、長友彩海
<STAFF>
原作:秋元康
脚本:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)、米山和仁(劇団ホチキス)
演出:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
演出補:長谷川景
音楽:伊真吾(OVERCOME MUSIC)
振付:伊藤今人(梅棒)
アクション:加藤学
制作:ポリゴンマジック
主催:舞台「マジムリ学園LOUDNESS」製作委員会
まず劇団鹿殺しの丸尾さんですね。前回のマジムリ舞台2018だけでなく、その後偶然観劇していた「山犬」でも脚本・演出をされていました。さっほー・めぐ・たなおちゃんが出演していた舞台です。
セリフに情景やストーリーを語らせるThe演劇なスタイルを強く感じることができた。冒頭にやや抽象的にハイライトを演じてから、それから本編に入っていく導入は山犬の時もまさにそうだったな。ヒール荒地vs闇落ちヒール化した嵐が丘vs新登場のヒールケニたんという、いわゆるヴィランズが戦いを繰り広げるダークサードonlyな話だから丸尾さんの味が強くなったのかもしれない。
ケーニッヒ
ケーニッヒが上手から走って登場してきたのウルっときちゃった。マジすか5の時に「怒るよりも笑う演技が難しい」って言ってたんだけど、ケニたんずーっといやぁな笑み浮かべてるじゃない。狂ってんだよなあ笑い方が。楽しそうに喧嘩してるの。最高よ。
メンズーアのビラが配られて読み上げられている中、あるところでニターッっと口が裂けんばかりの笑みになって私が勝つ!とワクワク興奮していて生々しかったですね。子役の頃の演技の経験は彼女の中にしっかり根付いていたんですね。
喜怒哀楽どれをとってもおっかない奴でした。モナルヒを取られて「くそう!」と拳で地面と殴る時でさえ、悲しみより怒りが強い。そんなケーニッヒが唯一優しい顔をするのがお母さんの話をする時。何がどうなってこうなったのかケニたんスピンオフ作品待機している民ですが、モバメで”母”を語っていたくらいだからこの役の重要なエッセンスだったんですね。これまでの数々のエピソードでも存在感が大きいことがわかるし、岡田さんの言葉を借りて「産んでくれたお母様、本当にありがとうございます*3」と言いたくなるくらい、ケーニッヒは生まれてから今までの村山彩希でできていると言っても過言ではないでしょうね。
感情の起伏とその熱量がほかのキャラクターよりも特に激しい役でした。それがミニライブパートに移った途端に間奏でリズムを口ずさみながらニコニコで踊っているんだから、何面相やねんってくらいの演者ですね。(握手とかオンラインで話していると、もしかしたらこの子は村山彩希という役を演じてるんじゃないかな?アイドルだなあ、と感じる時があるんですよね。まあ余談ですが)
いろんなお仕事が彼女のもとへ打診されに来ていることだと思いますが、一度にあれこれといろいろ挑戦するんじゃなくて自分で「やる」と決めたことに集中して、満点以上で打ち返してくる。本当にかっこいい。久しぶりにステージに立って演じて歌って踊る機会ということもあって前向きだったのかな?もやもやしてた霧からすっかり抜け出した演技。
昨日はモデルとしてランウェイも歩いていた。今の彩希ちゃんは応援していて楽しいです。彼女が輝く舞台がこれからもたくさんありますように。お出かけ楽しんでいってらっしゃいね。
イーリス
嫌われ役って書いてあったけれどなるほどね。でも気高くて美しいんだよなあ。親友のために財布のお金全部叩いた子がこうもヒールになったバックグラウンドストーリーが見たい。
すごくプライドが高そうな目してた。メンズーアは無の表情で眺めているし、自分が何か言って気分良くなった後に他の人に言い返されるとすんごくウザそうな目で虚空を睨みつけるのね。ああいうキレ方って若者特有というか、おっさんがやったら目の奥の筋肉つっちゃいそうな感じ(伝われ(伝わらない。
そんでもって高笑いが怖いのよ。ちょうど下手側に来てその演技だったから、笑いながらのけぞってるの目の前だったんだけどいや…気味悪くて。すごいなあこの子。
オンライン蹴り上げ会は何部の券とればいいんでしたっけ?
ヌルには申し訳ないんだけど、後輩たちにボコらせといてトドメの一撃は自分の脚で下す。あのシーンほんとかっこよかったわ……マジムリ界のリリー・フランキー。そしてレッツゴーで右足エビデンスやってた伏線をここで回収(多分どっちも違う。
先日のSHOWROOM*4で瑞葵ちゃんがイーリスの裏話を話してくれました。イーリスは「冷酷で心のない女」ということで根っからのヒール。そして元々が彩夢ちゃんということもあり、実はそんなに喧嘩が強くない。自分が勝てると思った時しか手を出さないので「殺陣では全然活躍してない」のだとか。ヌルを仕留めた時も最後もう絶対に反撃されない状態になってからでしたね。そういうハイエナ的な部分も悪役の感を強めてたのかもしれないですね。いやー名演技でしたよ。強がった笑みと束の間にみせた高笑いに瑞葵ちゃんの実力が詰まってた。
生徒会の楽曲(レーヴェ)などクールな曲では髪を振り乱して踊っているし、アイドル曲では髪が顔にかかることもなく踊っていて、「髪の先まで神経がある」ようなパフォーマンスをするのは河西さん以来と言って過言ではないでしょう…。そしてマジジョテッペンブルースのパラパラ、あなたが踊ると崇高なのよ。高尚なパラパラ。
キャスト
ネロ様ってXIII機関のかたでした…?
喧嘩から足を洗って知的好奇心を満たして勉強に励むネロ。青春、青年って感じですね。いいなあ。その感じを掴めたらもう世界が輝いて見えるようになるからそれはそれは宇宙工学は楽しいだろうな。マジムリ2018の時とは振る舞いも声のトーンも全然違う。それこそ別人みたいに。でもただの知的な人ではなくてしっかりと正反対な過去を背負っているネロ。ハマりますね岡田さん。黒いマントにフードかぶって本読みながら歩いてる姿はXIII組織の人にしか見えなかったけども。マールーシャを短髪にしたらこんな感じの美しい青年になるのだろうか…(わしはデミックスが大好きなんですけどね舞い踊れみずたちいいいいいいジャジャーーーン)
ドラゴンとハイエナは激しい演説で舞台の幕を開けたり、喧嘩をしなくなって負かされてるネロに吹っかけていったりして、いい脇役でした。二人が知ってる昔のネロもこんな仲間思いの優しい人だったのかな(吹っかけてたけどw)
ヌルはなー…恐怖で狂っちゃうのが切ないけど、こういう歴代の王様っているからね。王族の家系でもなるんだから、平民から成り上がっていった立場だったら尚更恐るだろうね。誰もが夢見て立てる場所でも、誰もがそこに立ち続けることができるわけじゃないんですよね。
それで、ヌルの側近二人がチーム8で構成されてるのがグッと来ました。秋元康、慧眼だからなんだかんだで今のAKBもきちんと「見る」ことができてて、メンバーの個性をうまく汲み取って役にしている。丸尾さんもまたキャストを見ながらキャラクターを作っていくのがお上手なんですよね。"このメンバーがこの役を演じる意図"が見えるといいますか、違和感なくすっと観ていられると言いますか。推しのケーニッヒもイーリスもそう感じました。なので
下尾先輩に時代劇のイケメン剣士役を…!そして山内瑞葵さんにシャンプーのCMを…!!
降板を余儀なくされたメンバーの代打で出演した俳優・北澤早紀の話をしよう。
いい仕事されるんです北澤さん。スポット当たってない時でもヌルの言動に怯えたり、ギョッとして考え込んだりして豊かなんですよ。パフォーマンスパートでも、気づけば早紀ちゃん追ってたってこともしばしばあって目を引きます。マジムリの世界観というか要素って「旋律テロル*5」を思い出すものがあって、テロルの早紀ちゃんはそれこそ一人称僕みたいなキャラクターだったのでなんだか懐かしくなって、また観たいなと思った。ブログ残してなくて本当にごめん。下書きはあるんだ。
そして水を得た茂木。こんなにヤンキーが似合うメンバー未だかつていたかよ…茂木さんの出ているストレートプレイの舞台を1公演だけ見にいったことがありますが、主演でAKBからやってきただけあるしっかりした演技をされていたのですけど、あれは脚本も共演キャストも悪かった(タイトル伏せますけど)から彼女の良さが生きた感じではなかったんですよね。そういう意味ではタナカガさん意識の今のキャラクターとビジュアルは彼女の"らしさ"が出ているのかもしれないですね。とにかくヤンキーの方でした。
あとゲストについては込み入ってますので一言だけ。
コロナ禍のマジムリ
マジすか学園・マジムリ学園シリーズはいずれもAKB48で活動する少女たちの中にあるどろどろとした闇の部分をパワーに変えたドラマだと思っているんですが、今回もコロナ禍の不満をぶつけてきているように感じました。喉痛めちゃうんじゃないかな?ってくらいの声を張ったり、あざだらけになって殺陣の練習したり、体を犠牲にしてというか何というか。この1年何もできずにいた鬱憤を晴らしてるみたいに。
いつでもそこにある劇場公演も休館と再開をくりかえしていてまだまだ安定しない。クラスターがまた発生する可能性だってあるし、このマジムリの舞台だってコロナ感染で涙を呑んで降板したメンバーが何人もいた。誰もが「もしかしたら自分もそうなるかもしれない(="次"がないかもしれない)」と思わざるを得ない環境だったからこそ、今ある魂を全てぶっつけてくるような演技が観られたのかなとも思いました。
綺麗な姿を見せるアイドル(idol)が、血生臭い人間と化して現実の怒り・不安を突きつけてくる。マジすか・マジムリの醍醐味ですね。