優しかった気持ち

人がつくったものが好きです。AKB48劇場公演。

第4回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦決勝大会【20220112@舞浜アンフィシアター】

ただの雑感なんですが、雑感とか感想とかレポとかって自分で言い分けるのもうめんどくさいので(ひどい)、とりあえず思ったことをつらつらしていきたいと思います。全員に触れられる知見はもたないので、覚えておきたいことだけ。そういうブログです。

 

目に見えないものに数字をつける

これまであまり興味なくて番組も見たことがないんですが、「お出かけ」中の推しが初参加するということと、そんな村山さんがチケット申し込み期間中に珍しく宣伝ツイートしてるのを見かけたので、そんな言うなら投げてみるかと思って投げたところ当たったので行ってきました。

聞けばこの大会も4回目を数え、これまで好成績を残している岡田さんが最後に大勝負に臨む回とのこと。そこに重ねた推しの初参加。そして、ディズニー生まれディズニー育ちにとって舞浜というホームの会場で観覧できたことも嬉しかったです(といいつつアンフィシアター初めて←)

 

個人的に最近、私は"目に見えないもの音痴"なんだなと感じることが多くて、音楽のこととか特によくわかってないです。なので稚拙な感想しか言えないし、おそらくこの文体のせいで「偉そう」とか「批評家」って指さされてる自覚はあるんですが、私の"これまで"からしてこういう書き方でしか感想を表現できないので、「偉そう」に聞こえてしまったらごめんなさいね。そんなつもりはないことを先に断っておきます。

 

歌唱の感想

今回はとかく歌がうまい人々によって構成されたステージということで、まあ良いコンサートを聴きに行くつもりで行きました。審査員の人が「歌はその場で数分で紡ぐストーリーだ」ということを仰っていましたが、アイドルであり人間である彼女たちの「歌以外のストーリー」も多分に見られたイベントだったと思います。

というのも、私は出場者20名のことをよく知らないし、推している箱のAKBでさえも知らないことが多い。けれど彼女たちが「歌が好きだ」ということだけで十分で、何も知らずに初めての劇場公演を楽しんだ時のような、初見の新鮮味がありました。

 

音楽界隈は本当に疎いので、最近はやりの歌手やヒットソングの名前を挙げられてもわからないことのほうが9割以上ですが、それでも「これはaikoの歌い方だな」と思えばおだえりさんは本当にaikoに憧れてたり、「この人はミュージカルが好きなんだな」とか「民謡っぽい力強さがあるな」とか、彼女たちの"これまで”や"好き"という想いが歌声に乗っているんですね。彼女たちひとりひとりがこれまで聞いてきた歌、憧れて目指した声、表現を垣間見ることができたのがとても楽しかったし、本当に好きなんだなと20人20色の歌に浸らせていただきました。

 

基本的にAKB以外のメンバーははじめましてだったんですが、坂本愛玲菜さん(HKT48はアイドルらしい甘い歌声で他の演者とは違う色をしているなと。歌い始めてすぐに「あっ」と惹きこまれるものがあり、私のような素人でも親しみを持って聞けました。最終決戦に進んでそこで歌った2曲目は自分が好きだという歌をセレクトしたということでとても楽しそうに歌っていたので、観ていて楽しいステージでした。

今村美月さん(STU48はまさか「ブギートレイン'03」をぶち込んでくるとは思わなくてびっくりでしたが、あの場で藤本美貴に与えられた癖の強い歌唱を歌いきるってのはとんでもない実力の持ち主です。藤本楽曲は音の高低のふり幅がすごいので弱者にとっては鼻歌でも大変だった思い出がありますが、それをパフォーマンスで目でも見せながら歌いきるというのは本当にすごい人です。最終決戦のジャズもまさかで、手持ちのカードがどれも強い。しかもブギにしろスイングにしろ自分のものにしているのが凄まじい。

あとMISIA「逢いたくていま」をぶち込んできた矢野帆夏さん(STU48も素晴らしかった。サビに向かって盛り上がるにつれて会場をどんどん支配していく圧倒的声量と「あいたい」っていうメッセージの圧と。ライトの神々しさはビジュアルでも脳裏に焼き付いています。ディズニーシーと言えばMISIA先生だからその選曲も嬉しかったですが、個人的には神田沙也加さんに思いを馳せた1曲でもありました。作品の中ではアナを通じて彼女に会えるから、そういう意味ではいま逢える場所なんですよね。舞浜って。

ディズニーと言えば決定戦でモアナの楽曲「どこまでも ~How Far I'll Go~」を歌った方がいましたね。清水紗良さん(STU48か。モアナは生まれ故郷の島からひとりボートを出して未知なる海に乗り出していく勇敢な少女ですが、果てしなく無垢な海と空が見えましたね。…いや、STU強くない?(笑)海だから舞浜開催でパワー増したか?

でも思うんですよ、千葉県ってBUMPとかELLEとか名高いバンドの方々の出身地だったりしますけど、海があるぶん空が開けてきれいな光景(日の光の存在が大きい景色といいますか)がたくさんあるので、海がある環境って特別そういう感性が磨かれることってあるのかなーなんて思ってます。海が関係あるか、新潟のスーザンボイル三村妃乃さん(NGT48)も凄まじかったですね。選曲がどれも実力者じゃないと選べないものでしたし、そのパワーも圧巻でした。

そして古畑奈和さん(SKE48はさすがすぎて何も言えん(笑)。彼女が表現する歌のジャンルを私は全然知らないですが、世界にしっかりと引きずり込んでくれたので、嵐のような凄まじさの中でも置いてけぼりにはならなかった。歌って演技なんだなと。しかも歌唱前のトラブルでMCのマイクを繋げられる実力は、さすがSKEの劇場で鍛え上げられた彼女だなと思いました。一度ですが、古畑さんはいなかったもののKII公演に入った際に栄の彼女たちのMC力にはとても感激したので。

意外ということでいうと岩立沙穂さん(AKB48についても書いておきたい。推しを見る中で彼女を何度か観てきましたが、今回の決定戦には推薦枠?で勝ち上がってきたと聞いていたことと、オープニングのがちがちな表情を見てしまった(笑)から、だだだだ大丈夫?って思っていたんだけど。その心配は不要でした。本当に失礼しました。
出演者がみんな歌の世界に没入するために、歌う自分をつくって挑んでいる中、岩立さんは「ああ、AKBの子だ」と感じさせるいつもの笑顔(と立ってる小指)を見せてくれたのがちょっと嬉しかったです。でもいつもの沙穂さんではない。声を太くしっかりと安定させて、それを保って歌える音域?の曲を選んで、しっかりと自分にできる最高のパフォーマンスをしようという姿勢があった。普段見るAKBらしい彼女とはまた別の魅力を見ることができた。逞しい人ですね。

AKBメンバーの話に入ってきたので触れますが、

ねえ田口!!!!おお田口!!!(語彙放棄)

この人ずるいですねえ。一瞬「私今日ミニシアターに映画を観に来たんだっけ?」って思ったよ。セリフでいっきに情景を描いてそのドラマの中で歌うような。審査員がアーティストだと評していましたが、田口愛佳さん(AKB48は自分の見せ方をよくわかっていらっしゃるんですよね。そんな自信満々な彼女でも緊張して弱腰だったんだから、この歌唱力決定戦って凄まじいステージなんだなと思いました。

岡田奈々さん(AKB48の「未完成」は好きでした。初めて聴く曲だけど彼女らしい選択であることが歌詞の一つ一つ確かめながら歌うので伝わってきたし、エンディングに向けて感情と切なさをどんどん昂らせていく様はさすが岡田奈々の表現でした。

 

「嘘」をついてステージで魅せる姿が美しさだとしたら

さて、得意の大脱線フェーズです。

メンバーさんたちを見ていて思ったんですが、こういう1位を決める場では勝負に臨む姿勢が問われるんだなと。

歌唱後のコメントで「失敗した」とか「悔しい」っていう弱い本音を外に出さない姿勢というか。誤解を恐れずに言ってしまえば「嘘をついてでも自分を魅せる力」。ステージに立ちつつ裏の素顔をみせるような「アイドル」として活動する彼女たちにとっては、これは方向性がまったく真逆の努力かもしれない。

 

でも正直、初見の素人は言われなければわからないんですよ。それにたとえ失敗したにしても、それが「美しくない」に直結しないのが目に見えない芸術世界の難しくも奥ゆかしいところで。本人がその表現に自信を持っているかどうか、その失敗さえも抱擁できる愛を持っているか、みたいなものが重要なんじゃないかななんてことを思いました。

(かつてミュージカル「ウィズ」主演の最終オーディションで、"失敗"して音を当てられなかったにも関わらずその魂で宮本亜門を泣かせた増田有華というドロシーがいました)

 

弱いところを受け入れられるかどうか

というのも、今回の歌唱力No.1決定戦。20人の審査は4つのブロックに分かれて審査されて、1ブロック5人が歌い終わるたびに皆がステージに一列に並んで審査員のコメントに入ります。5人目に歌唱を終えたメンバーは、ステージに再登場した4人と一緒に一列に並ぶんですが、その5人目のメンバーが自分の立ち位置をまちがえたり、歌い終わってすぐに動き出せずわたわたしているのが印象的でした。

 

それっていくらリハーサルを積んでもスムーズにできることじゃない。あの瞬間って、全身全霊の表現が終わった直後のものすごく無防備な状態だから仕方がないじゃないですか。人によっては、きっともうこのあと家まで帰る体力すら使いきってしまうような場所。そういう勝負の場で、失敗や悔いてしまうような突発的な出来事はつきもの。

例えば、最終決戦で入場した時にシューズのストラップを直すために立ち止まっていたメンバーがいたし、古畑さんのMCつなぎも立派なものでした。急遽歌い方を変えて、チャレンジしてみたり逆に安全を選んでみたり。それらを「縁起が悪いネガティブ」ととるか「きちんとした自分で勝負に臨むためのハプニング」と取るかって、演者のマインドにとっては大きな違いではないでしょうか。

歌の実力があるない以前の話で、人として自分の表現を愛しているか?そんな自分を認めて大切にできているか?に直結しているんじゃないかなと。いうのを思いました。

 

この歌唱力No.1決定戦というイベントは技術的な歌唱力を競う以上に、アイドル(虚像)として自分の歌を歌う力が問われている舞台なのかもしれないと思いました。そういうところは歌唱力を量る大会といっても、アイドルらしくていいじゃないですか。

そしてそういう意味で今回のステージを振り返ってみると、今回の上位3名と審査員特別賞の結果は納得できるものでありました。

 

村山彩希さん(AKB48)の歌

歌うことに振り切れているから、歌い方のくせのせいで上手の席では全然顔が見えなくて(笑)。観客もカメラも忖度なしで歌に集中しているのをみて、本気だわこの人って思った。まあ、本気じゃなかったことなんて一度もないんですが。この方は。

歌に集中といっても、歌詞に合わせて手振り身振りをする彼女の表現は力強さを感じた。曲の疾走感にしっかり乗れていて、歌声とビジュアルとトータルで魅せてくるパフォーマンス。私にとってはまったく知らない曲だったけど、サビになった瞬間に何故だか全身がカーっと熱く高揚する感覚があった。推しの歌って熱量があると思いました。推しの歌だからそう感じたというのもあるかもしれないけど、やっぱり村山彩希さんの歌が好きです。他の誰かでは替えられないものを持っていらっしゃる。

 

アツいとは言っても、村山さんの声は水とか風とかみたいに透明なんですよね。湖面が揺らぐような声の形をしている。高い声は風がふわっと舞い上がるようなイメージで。無垢を象徴するような白さ、透明さは誰もが持てるものではない。それこそ審査員が言っていた通り「ギフト」です。

 

ギフト(gift)は英語では「贈り物」を意味しますが、ドイツ語では「毒」の意味になります。これってすごい示唆を含んでいると思いませんか。贈り物と言われたって、それを与えられた本人(受け取らされた本人)にとってしてみればプレッシャーにもなるもので。誰もが羨むようなパワーを生かして幸とするも、持て余して不幸とするも自分次第。

ですが村山さんが自分のギフトに飲まれることなく、期待に応えるパフォーマンスを見せることができる人であることはもう知ってます。

期待に応えようとしているわけじゃなく、しっかり村山彩希のパフォーマンスに昇華させて魅せてくるのが彼女の凄みです。ダンスでも歌でも演技でもSASUKEだって、とにかく彼女が取り組むすべてのことについてです。

 

でも彼女がダンスの方に振り切れていた理由について、ゆうなぁコンの時に痛感しましたが、隣にいるなぁちゃんが歌を核にしていることが一因じゃないかと思っています。二人一つで見られてきた彼女だからこそ、なぁが歌ならゆうはダンスで…みたいな。そういう"大人の目"で求められてる自分を理解してそうなれてしまうのが、良くも悪くも彼女という人で。

でも以前のブログでも書いた通り、二人とも岡田奈々村山彩希それぞれが一人でしっかりと立つことのできる表現者。推しの村山さんは美しい肉体でみせるダンスパフォーマンスだけじゃない。その歌声だって唯一無二で、ずっと聴いていたい心地よさ、美しさ、まだいける!って希望があったんですよ。ずっと前から。

わかってたんですよ。わかっていたじゃないですか。

 

そんな村山さんの「ギフト」が見込まれたというのなら、審査員特別賞の枠で彼女が評価されたことには大きな意味がある。自身のスコアでは届かなかったとしても、まったく恥じることない結果だったと私は思います。大好きな彩希ちゃんの歌声が褒められているのはとても嬉しいことです。

 

「お出かけ」に対する迷いを見聞きしたこともあって、この結果を彩希ちゃん本人がどう思っているのかを想像すると複雑な思いがないわけではないです。

ただ、今回の審査員である音楽界隈の人々から歌を評価されたことは、彩希ちゃんにとって大きな自信につながったと信じています。人一倍の努力家なのに自己評価が低い彼女だから、プロの方々からのコメントは本当に大きな刺激だったんじゃないかと。高評価ばかりではない指摘もありましたからなおさら。頑張りを認められたことは純粋に嬉しかっただろうな。

 

 

劇場公演から走り出して今や選抜という枠すら超えてさらなる高みを目指せる。AKB48に在籍して10年以上活動していても、まだ新しい景色を見せてくれるかもしれない。彩希ちゃんのポテンシャルって底なしで、それってファンとして彼女を応援していてとても幸せなことじゃないですか。

それだけの魅力、希望を持っている村山さんだからこそ、ファイナリストライブも、これからの「歌うこと」も、堂々とたくさん楽しんでほしいです。

本当におめでとう!

 


f:id:yuuki0507com:20220113184750j:image


f:id:yuuki0507com:20220113184812j:image