優しかった気持ち

人がつくったものが好きです。AKB48劇場公演。

So long! MV

河西さんの美しさは嘘じゃないよ!\(^O^)/
というわけで画像は美しきRubyですが、今日は大林宣彦監督が手がけた「So long!」のMVの感想!


先日、BSで秋元康Pの密着ドキュメンタリー番組が放送されてましたが、MV製作現場とレコーディングスタジオ、秋元Pの作詞上げとの秒刻みのやりとりが明らかになり、かなり目まぐるしく映像が制作されてることがわかりました。
でも今回のMVは、テロップによるとAKB48出演場面の撮影は 2012年11月15、16、17日の3日間 新潟県長岡市の全面協力で行われた」とのこと。
2月にリリースする映像にしてはとりかかりがとても早い。
2011年3月の東日本大震災から、月1で現地に赴きイベントを続けて2年。
AKB48の被災地訪問活動のひと区切りの記録として、このような映像化の案を考えていたのでしょう。
空想の設定がありドラマ仕立てになっているものの、同時にルポルタージュとしてのMVですね。
中越地震東日本大震災と2つの天災、2カ所を繋ぐストーリーになっています。


博物館の資料映像なんかにありそうなクオリティー
以前東京ディズニーランドにあった「ミート・ザ・ワールド」みたいな教育的な印象を受けましたww
背景と人物の合成があからさまにわかるけど、でも映像技術の最前線なわけではないし、
この演出を選んだのも意図的なはずです。



メンバーはその目で被災した現場にいくという行動をくり返すことで“目撃者”になったわけですが、
過ぎてしまった出来事である以上、目撃者より親密な立場になることは絶対にできない。
再現することでその痛みを忘れないように作品という形で残していくことしかできません。
まゆ演じる夢が「戦争を経験してないのに戦争映画に出た」ことに複雑な気持ちを抱くように、
「震災を経験していないのに震災を記録する映像作品に出る」にあたってのAKB48の精一杯の距離を示しているように感じました。


現地の方々も多く出演なさってる作品だけど、そこに同じ次元で役を与えられた演者が混ざって登場するわけではない。
ストーリーの中核をなしている渡辺麻友松井珠理奈の2人は当事者を演じるのではなく、役を演じながら現実を語ることしかできない第三者として加わっている。
寄りそうことしかできないもどかしさとか、違和感はものすごく強いけれど、
それはこの映像を「ミュージック・クリップ」として見ているからであって、
普段我々が見てるテレビのニュースやドキュメンタリー番組、上記したような資料映像だったら馴染む効果なのではないでしょうか。


逆に、綺麗な映像としてまとめないことで、より制作的なビジョンを作り出そうとしている。
時折挿入されるテロップのフォントも、いかにも一般人が編集した感(一昔前な気はするけどw)が出ていますし、
おそらくハンディーカメラで撮影されたであろう映像も多くあった。
そのようなアイロニーみたいな意図は少なからずあるような気がします。
「押しつけがましい」という感想も見かけましたが、
それくらい押しつけがましく伝えていかないといけないことだと監督は思っておられるのでしょうね。



「わかる?わからない?これからゆっくりわかるから、ちゃんと聞いてよね!」


MV前半に一区切りついたところでの夢の台詞ですが、
「これからゆっくりわかる」の意味はもっと深いところにあるのではないかな。


秒単位の情報化社会ではそんなのが日常茶飯事になり、
発信しなければ“思った”という事実さえもなかったかのように扱われかねない。
何かの感想でも何でもそうですが、すぐに意見を求められる。ほんとはそうじゃないのかもしれないけど、そう催促されてるような気持ちに勝手になってしまう。
感想とかレポートとかブログもツイートも、それだって自分から出た一瞬のただの言葉でしかない。


でも作品や出来事から何かを得るっていうのは、何年も自分の中に忘れずに留めておいて時間が経ってから本当にわかるもの。
嬉しいことでも悲しいことやショッキングなことも全部そう。
だから、本当に正しいことなのかなんて是非はおいといて今はとにかく知ってくれ!っていうメッセージのようにも思えました。
時間をかけて咀嚼して、いろんな考えを巡らせてほしいはずです。



“ART”のどこに美術の「美」があるのか

茂木健一郎さんは長岡造形大学の組織の一員ではないようなのですが、
長岡市とは様々に関わっておられ、過去に長岡造形大で講演会を行なったようです。
MVの最後では大学長役として登場して入学の祝辞。
山下清「みんなが爆弾なんかつくらないできれいな花火ばかりをつくっていたらきっと戦争なんか起きなかったんだな」という言葉を引用し、以下の言葉が続きます。


芸術とは何か?
平和の心を学ぶ事。
歌う、踊る、演技をする、絵を描く、彫刻をつくる、写真を撮る、小説も、映画も、みんなそうだ。
そこに表現されたことは不思議で、おもしろく、美しい。
だから、どんなつらく悲しい出来事も風化せず人々の心に記憶される。
戦争や災害の痛みを忘れず、それを学び、過ちを二度と繰り返さぬ力となる。
それが芸術だ。


穏やかな日日を創造しよう。
爆弾ではなく花火を作る、賢い人となろう。
君達の脳の中には大きな空が広がっている。
その心の空の中にたくさんの芸術の花を咲かせようじゃないか。


AKB48のシングル楽曲のMVとしては低質かもしれませんが、
AKB48という注目される宣伝媒体のグループがこのような映像に加わること、より多くの人の目に留まる形で残ることはとても大切。
影響力をもった強き者がやるべき仕事を果たしたということではないでしょうか。
このブログでは彼女たちのMVの記事を「美術」というカテゴリーのタグを付けて括っていますが、アートってそういうもの。
綺麗なものだけが“美術”じゃないです。