映画作品の感想はnoteのほうにあげることが多くなっていたけど、ディズニー作品ということではてなに投稿したいなーとおもって書いてます。
なお当ブログはネタバレ含みますのでご注意くださいませ。また、ブログ主は"新作が公開されるたびに足繁く映画館にいく"ほどの熱心なDヲタではないですのでご容赦願います。
「作品評価は世界的に極めて高い」
たまたま目にとまり「ディズニーの新作公開されたんだ」と知った記事がこちら。
しかし、こんなことになっていたとは…。でも確かに私もコロナ流行をきっかけにディズニープラスにも入ったし、実写版ムーランもプラス限定での公開(しかも月額+α)と聞いていたし。感染対策も考慮して、映画配給の仕方に試行錯誤しているんだな。
この記事の2ページ目にある、次の一文(の注釈部分)が気になった。
映画興行において、作品内容とは関係なく(ちなみに今のところ『ラーヤと龍の王国』の作品評価は世界的に極めて高い)、いかに宣伝が重要かを証明することになってしまったのだ。
日本の支社にたった一つの裁量も与えなかったディズニー本社|Real Sound|リアルサウンド 映画部
ほう。それならどんな作品か観てみよう、とおもい映画館に足を運んだ。
過去10年くらいのディズニー映画雑感
ラーヤの感想を述べる前に、まずは最近のディズニー作品についての思うところを聞いてほしい。直近10年ほどのタイトルをディズニー作品の一覧(Wikipedia)を参考に振り返り、観た感想というかネガティブな辛い雑感を書きたい。
- CG技術の顕示欲がすごい。見せつけたいんだなーという感想が1番強い。ピクサーがディズニー傘下に入って以降特に、技術を披露するためのシーンがどの作品でも印象的。
- 過去作の続編や実写リメイクばかり。挙句にはアナ雪2では公式が二次創作し始めたとさえおもった。
- 「3Dでこの世界観を描きたい!」という意思がとかく強いため物語構成が甘い。散りばめすぎた伏線を回収しきれなかったり前半の起承が長すぎたりなど無駄な描写が多い。
- 主人公の感情の起伏が激しい。希望と絶望、和解と暴力が代わる代わるやってくるので忙しくて疲れてしまう。
ディズニーはもう"新しい作品"を創造できなくなってしまったのか? 新作を観てはがっかりしてきた私の雑感を、2021年、ラーヤは覆すことになった。 ディズニー近年まれにみる良作。一言で感想を述べるとしたらそうなる。
「ラーヤと龍の王国」感想(以下ネタバレあり)
音楽
東南アジアを模した架空の国々が舞台になっていて、まず音楽がいい。青銅の楽器の音色がいかにも地域の雰囲気を伝えてくれる(ガムランというらしい)。豊かな自然、共存していた龍への信仰や古代遺跡があったりするので神秘的でもあるし(ちょっとミシカみたい!!)、だからといってコテコテにエキゾチックということではなく良いところでオケの弦を利かせてくるのがまた扇情的だったりする。ちょっとおしゃれ。
映像
東南アジアの文化や生活を模しているようだったが、建物には人気を博したいわゆるオリエンタリズム(異国趣味)のように、西洋視点から美化された東洋文化が反映されているようでもあった。真っ青な宮殿の回廊とか。天井が高く、窓が吹きさらしになっている建築が自然と隣に生きる世界観を伝えてくれてとてもいい。それを2DではなくCGアニメで作ることに意義があると思った。昨今感想を書くに当たって「ネタバレ」が重要視されているが、ネタバレされてもなお再見してあの世界に浸りたいという気持ちになった。ディズニー作品でそう感じたのはとても久しぶりだった。
ワヤン・クリ
龍と人間が平和に暮らしていた昔話や空想上の話はインドネシアの影絵芝居ワヤン・クリを模したようなタッチ、あるいは古文書のような2Dアニメで描かれているので、本筋の物語とメリハリがついてる。
国名や君主名がやや覚えにくいが、冒頭以降もラーヤが土地に足を踏み入れるごとに地名が表示され(RPGみたい)、国同士の情勢などはラーヤが仲間と作戦を話すときに地図を広げて説明してくれるからわかりやすく、鑑賞者を迷子にさせないような配慮を感じた。
ストーリーのテンポがよく無駄がない
ドルーンによって石化してしまった父、そして龍・シズーが言う「相手を尊重し信じること」を、ラーヤも旅の中でシズーに導かれるようにしてその思想を受け入れていくことになる。そして敵国だったはずの民族と話し、率直に語り、手をとって進んでいく。
ストーリー展開はいわゆるディズニーっぽさがどこか薄くて、RPGのゲームやアクション映画を彷彿とするテンポ感があった。アメリカ映画にたまにある「海外ドラマのゆるゆるとしたテンポの進行がそのまま映画になってしまった」ような感じがなく、シーンに無駄がない。
「人を信じること」にテーマが据えられているため、ラーヤとその仲間たちは正義で進んでいく。疑心暗鬼になりそうになれば誰かが支えるから病まないし、信じて裏切られそうになるとラーヤが助けに来てくれて物語がサクサク進んでいく。まさにワクワクの冒険活劇を魅せてくれるスーパーヒーロー。
ラーヤ
ラーヤも暗い影は持っているのだが、シズーが底抜けに明るく振る舞うことでやっとコントラストが出てくる感じ。そうして主人公ラーヤの疑心暗鬼ぐあいは描写が極力省かれていて、あくまで「過去」として描かれている。だから主人公はいわゆる闇を背負っている振る舞いを見せない。それがいい。
他の登場人物たちもそう。ドルーンに家族を奪われてもなお一人一人個性を持って一生懸命に生きていて、その中でラーヤの仲間になっていく。旅が進むにつれてヒーローが揃っていく感じ。オーシャンズ11、ONEPIECEのようなアクションとワクワク。
ある意味わかりやすい勧善懲悪。だけどわかりやすい「悪」がいないから子どもっぽくはならない。強いて言うなら悪役はドルーンかな…。ラーヤ宿敵だったはずのナマーリとさえも和解し、彼女の過去も浄化する。対ドルーン戦のクライマックスは胸が熱くなったな。本当のスーパーヒーローは誰一人として見放さない。
ラーヤかっけえ!!! 私が子どもだったら戦隊もののヒーローたちと同一視していたと思う。クールでかっこいい。ネット上で対立する意見・歪み合いが目にみえるようになった2021年の今に向けたメッセージとしても深く響くものがあった。
ラーヤとお父さんとの親子愛も素敵だし、剣の刃に反射した家族の姿を見て正気を取り戻す描写とかすんげー繊細だった。スタッフロールには本編中で登場人物たちが「石化した家族とこんなことしたい」と夢を語っていたことが実現されたような後日談が描かれていたりして、制作スタッフが最後まで物語を愛していることがわかった。
物語もキャラクターもとても深く編まれていたと思った。先日観たばかりだけどもうまた観たい。