ミュージカル座2017年1月公演 ブロードウェイ・ミュージカル「アイランド かつてこの島で」【20170119 19:00- & 20170122 12:00- @IMAホール】

行ってきました(/∀\*)最終日だけ押さえてたのですが、河西さんが素晴らしい仕事に仕上げてくるのは予想できたのでやっぱりもう一度観ておきたくて、初日のチケットを買い増ししたのでした。初日19日はA席の一番後ろの下手席、最終日22日の昼公演はSS席の中央ブロック上手寄り。どちらも通路側で観やすかったです。日程的にどちらもキャストは月組でした。
IMAホールは光が丘駅前の商業施設の4Fに入ってる劇場で、客席はきゅっと詰まってて、反響板やせり出してる部分があり天井はそう高くはないのですが、それと比べるとステージが横にも奥にも広く、しっかりとセットを置いて30名の演者が一斉に踊っても十分な空間がありました。

以下の感想は、ミュージカル本編や物語についてというよりは、河西さんのパフォーマンスを中心に書こうと思います。最終公演も無事に終わっておりますが、ネタバレを含んでいるので閲覧注意です!
…と言いつつ、アイランド公式サイトに「ストーリー」と称した見出しでラストのオチまでしっかり載ってるんですけどね!!w
ただ実際に本編を観てみると、最後までストーリーが公開されてる理由がわからなくもなかったです。上演1時間30分ぽっきり休憩なしの舞台は、終始歌と音楽とダンス。歌が終われば次の歌で、まさにミュージカル。地の演技だけの場面はとても少なかったです。だから、歌詞をうまく聞き取れないと物語の内容が入ってこない。導入や歴史を語る場面では、聞き慣れないカタカナ言葉も多い。観衆が置いてけぼりにならないように、知りたい人には予め顛末がわかるようにしてるのかなと。あとはブロードウェイミュージカルということであくまでもスタンダードの演目として捉えられているとすれば、最後まで話がわかっていても何ら違和感はないなと思いました。

あと、以下、劇中歌のタイトルを載せたかったのですが、どれがどこのシーンか憶測だけで判別しているので、ご指摘ありましたらリプなりコメントなり頂けると有難いですm(__)m

アイランド(2017) | ミュージカル座

【キャスト(月組)】
河西智美 ティ・モーン【主人公の黒人少女】
木暮真一郎 ダニエル【裕福な若い白人男性】
岡 智 トントン・ジュリアン【ティ・モーンの養父】
松岡美桔 ママ・ユーラリー【ティ・モーンの養母】
大田 翔 パパ・ゲー【死を司る悪魔】
田中利花 アサカ【大地の母】
清水彩花 エルズリー【愛の女神】
杉浦奎介 アグウェ【水の神】
大胡愛恵 アンドレア【ダニエルの婚約者】
今村凛音 リトル ティ・モーン【ティ・モーンの幼少期】 他、ストーリーテラー20名ほど

物語

「アイランド」は元々は1982年発行の小説で、それを原作としたオフ・ブロードウェイミュージカルがて1990年初演とのこと。2014年6月には、AKB卒業生のはーちゃんこと片山陽加さんが同じように主演を務めました。
想像よりも比較的新しい演目でした。なんであんなに古めかしいんだろう?と思ったら、原作の着想源がアンデルセンの「人魚姫」やシェイクスピアらしい*1し、時代設定も20世紀前半頃のフランスだったせいだな。歴史ある西欧に憧れた、いかにもアメリカらしい作品。増田有華ちゃんが出演した「bare」「フットルース」などのブロードウェイミュージカルでも身分や属性の違いなどアメリカならではの話題は重かれ軽かれ必ず入ってるんですが、「人魚姫」の空想世界設定にその社会問題をぶっこんでくるあたり、だいぶロックな作家だなと思いましたw

ミュージカルの舞台は島。農民「ペザント」と、都会的な富裕層「グランズォム」が、歴史的(というか元をたどれば個人的)な背景の対立のもとで同じ島の異なるエリアに住んでいます。主人公のティ・モーンはペザントで、幼いころ巻き込まれた嵐から"神の意志"によって救い出され、義父母に育てられる女の子。神様がどうして自分を生かしてくれたのかを知りたがっていたティモーンは、ある嵐の夜、車の事故に遭ったグランズォムの青年ダニエルを助けて彼の空色の目をみた瞬間に、恋に落ち、その理由を悟ります。彼は島の反対側に送り返されますが、彼の傍にずっと居てあげたいティモーンは彼を求めて旅に出る、という導入。

音楽

カリブ海が舞台ということでトロピカルな音楽に包まれた楽しいステージでした。ここで思い出したことを書いておくと、明るい曲ダメなんだった()みんなが笑って踊る楽しい曲ほど泣くんだった()。まだ河西さん出てきてもないのに、Let's Danceの「生きるために踊れ」、この歌詞で涙腺をぶるぶる震わせてしまいました。この物語の上ではペザントが神々や愛する人のために踊るけど、一歩引いて見ると、それは舞台に立っている演者1人1人が生きるために踊っているわけで、そういう方向に事を考えてしまうとなおさら涙腺が震えるのでした…。
そして、下手の樹からリトルティモーンがひょこひょこ顔を覗かせていると、河西さん演じる大人の女性になったティモーンが登場。しばらく音楽を背にただ立ちつくして会場を見つめていて、特に表情をつくる場面ではないのだけど、感極まって泣き出しそうな顔がちらつくことも。

*2

踏みこんだことのない隣り合わせの世界。冒頭、旅に出ようと歌うナンバー(Waiting for Lifeかな?)に彼女の好奇心旺盛さや明るさがちりばめられていました。両腕を広げて、声を振り絞るように顔を小刻みに左右に振ったりして。メロディー末尾の伸びがホールに綺麗に響いて、音の波が気持ちよかったです。

幸福に満ち満ちたティモーンは舞台前半のお楽しみ。両親との別れを経てティモーンが旅に出た時の、大地の神アサカの歌は本当に楽しかったなぁ(Waiting for Life のリプライ?)。鳥やカエル、木々や風が大地の母アサカと一緒にティモーンを祝福するみたいに歌って踊る、その楽しそうなこと。ディズニーの映画を観てるような楽しさがありました。ティモーンは河や海の近くで育ったんですね。だから「大地のことは案内するから任せておいて、困ったら助けるから」と彼女を包み込むようなアサカは、まさに母なる大地という呼び方がぴったりな存在でした。動物たちだけじゃなく木や風や岩にも感情があるように描かれていて、思わず自分も釣られて笑っているのがよくわかりました。

続けて、その後ティモーンがどうやって街まで言ったのか、様々な聞いただけの噂話が\たーしか♪/と歌詞に乗っかってくる(Some sayだねきっと)んですが、「神様が車に乗って現れたらしい」は笑いましたw表情の作り方とか、音楽と歌詞とパフォーマンスの展開がどのシーンよりもディズニー映画っぽく思えて、ディズニー大好きな河西さんも楽しいシーンなのではないかなーと思いました。
「アイランド」の要素の数々がディズニーシーで上演していた「ミスティックリズム」を彷彿とさせるものがありました。だってね、音楽が生バンドなんて聞いてないよーーー!!!ステージ下手の上の方にオーケストラブースがありました。暗くてよく見えなかったけど、ドラムと木管と鍵盤の3名くらいかな?パンフレットには計5名が紹介されていましたが。…しかしな!人数限られてるのはわかってるんたけど、フルートとクラリネットとアルトサックスを1人で掛け持ちはさすがに!!イケメンやろ!!!プロの方のはずなので上手いのは当たり前といえば当たり前なんですが、ころころ変わるナンバーで持ち替え頻繁にしてるのに音ブレないし伸ばしきれいだし…。
それにしても、音楽の表現からイメージされるシーンが不思議なくらいあまりにもディズニーっぽかったので、ポスターにもある音楽監督のStephen Flahertyについて調べてみました。すると、彼が音楽担当した代表作にはアニメ映画「アナスタシア」があるらしい!この「アナスタシア」の監督はDon Bluth、ディズニー映画の重鎮であります。「アナスタシア」自体は20世紀フォックス製作なので厳密にいえばディズニー映画ではありませんが、ステファンが当時のアメリカのアニメーション映画製作の第一線で活躍していた人々とともに活動していた音楽家であることは間違いないようなので、この「アイランド」にもその息吹が吹き込まれているものと思って相違はなさそうです。
私自身が映画・パークともにディズニー大好き人間なので、劇中のいろんな要素を観ながらTDR内の事ことばかりを連想してしまって、どおりで楽しいわけだと思いましたし、つくづくアメリカ生まれの舞台なんだなぁというのをひしひしと感じました。

愛と死

一方で、重たいシーンもありました*3。ダニエルと出会った瞬間恋に落ちて運命を悟った時の歌では、生かされた理由が「わかったわ」の「わ」がそれまでの抜けるような高い音からいっきに低音に落ちるんですね(何てタイトルのナンバーだろう?)。あの音のずり落ち方に、彼女が良かれ悪しかれ自分の運命を悟ったのがよく見えました。運命を悟るというのが生半可な覚悟では敵わないということが、音によく表現されていると感じました。
彼を看病するシーン、おまじないをかける儀式的なダンスはじっと見ていると狂気のようなものすら感じることがあり、ちょっと怖いというのも正直な感想でした。それだけ取り憑かれたような表現にまで昇華できるように、稽古期間をがっつりとったのかな。足を踏ん張って、腕を突き上げて、胸を突くような強いビートで踊る。そんな彼女を心配し「若いのだからまた恋はできる」と説得する両親の悩みもわかり、最終日に二度目の観劇をした時にはこれがティモーンと両親が生きて会う最後の時だったんだなという切なさもプラスされました。

旅を経てようやく会えたダニエルは最初はギスっとしてるのですが、門番同様、ティモーンの人柄に魔法をかけられたように、彼女と優しく接するようになります。愛の女神エルズリーが歌い出してからの、ティモーンとダニエルと身体を重ねるシーンはよかったですね。観ていてもっと取り乱すかと思ったんですが()意外と冷静に鑑賞できた。河西さんが黒塗りを要するの黒人のヒロインのオファーを引き受けたことがまず驚きでしたが、文字通りの体当たりの演技にも挑んでくれて、河西智美はどんどん進化を続けているなぁと実感しました。

Some Girlsはダニエルのナンバーですが、着飾らず汚れを知らない子どものようと愛しんで歌います。彼にとってティモーンは、運命の女性というより、アンドレアとの恋を実らせようとする彼自体を包み込むようなはるかに大きな存在だったのではないかなと思います。ダニエルの歌は三拍子で、舞踏会のシーンでも流れるのはもちろんワルツ。カリビアンミュージックとは正反対の性格がよく表れていました。

彼が休んでいるホテルにたどりついたティモーンが何週間も出てこなくなると、街の人達はティモーンのことを、彼を誘惑している魔女のようだと悪い目で見始めます。全然違う時から考えていることですが、魔女に始まるようなこの種の存在って、こういう人間の営みの話が噂話でどんどん膨らんで、風船の糸が切れて飛んでっちゃったみたいにして伝説になるんでしょうね。舞踏会のシーンでも、いわゆる都会的なダンスを踊ることが出来ないティモーンを皆が冷やかすシーンは心に痛かったですが、ティモーンがいつもやるようないわゆる民族的ダンスを披露すると、自分を見下していた人達をもどんどん巻きこんでいって、すぐにみんなを笑顔にします。ティモーンという名前は愛称で、“神に愛されし子”とかそんな由来の本名が付いていたと思うのですが、その名の通り、良い意味で考えすぎずに今をまっすぐに生きていく彼女の姿は、周りの人達をも変えてしまうパワーを持っていたのだと思います。

しかしそれもこれも、身分の差という変えることのできない出生の違い、文化の形が違う、それだけでうまく運ばなくなってしまう。ダニエルは許嫁のアンドレアと結婚をして、式では迷信に従ってコインを投げます。ダニエルもアンドレアも、ティモーンとは違うしきたりの世界で一生懸命生きていることは同じ。だからこそ、交わることができずこんなにも乖離していかなければいけない二人の愛の儚さがより切実に引きたちます。

ところで、ティモーンを死の契約に貶めていくものの要所要所に、金属があったなーと思いました。古来から使われていたものだけれど、ティモーンの住んでいたペザントの世界には日常的には存在しなかった素材かな?自動車、ナイフ、コイン。自動車は彼女にとって異世界への憧れの象徴でもあったけど、同時にその車はダニエルを押し潰して殺しかけていた。パパ・ゲーに与えられた誘惑に負けて、彼に振りかがし、命こそ奪わなかったけれど二人の関係を殺したナイフ。ダニエルとは結ばれないことを諭され、ティモーンの最後の望みとともに命を奪い去ったコイン。
このことで、少し残念だなと思った感想がありました。それが金属の音。ナイフが手から落ちた時と、コインを手から滑り落とした時の音。ボトッっていう鈍い音だった。安全面で本物を使うわけにいかない/あるいは舞台上の素材の問題かもしれないけど、音が出せなかったとしても、金属音をかぶせるとか照明を一瞬光らせるとか、アクセントを付けてもいい決定的瞬間だったんじゃないかな?と思いました。ダニエルが交通事故にあったりショックなことがあるシーンで使ってた、あの赤いライト使ったらどうだったかな?舞台に関わったことがないし演出のことはまったくわからないけど、そんな想像が膨らみました。
前半のその交通事故のシーンの時に寄ってきた何人かのペザントが持っていた松明には、本物の火を灯されているように見えました。私の肉眼のみの感想なので事実かどうかはわからないんですが、前方席の方、どうでしたかね?乾燥するこの時期にあれだけのリスクを冒すなら、金属音まで何か工夫を凝らしてほしかったなーというのが、気になったところでした。

ダニエルに刃物を向けたことでホテルを追い出されたティモーンが、人々からの心ない罵倒の中、今まで触れることのなかった二人の関係に「ダニエルの愛人です」と白状する。さっきまであんなに幸せそうにしていたのが、髪は乱れ肌艶さえ失われたようで、溢れる悲壮感には息が詰まりました。運命が尽きてホテルの前で死にうずくまり目を閉じる直前、瞳の鈍い光は、魂までティモーンを演じきっているようでした。
この舞台は神々の登場シーンから始まりますが、「死」の反対が「愛」であることが少し面白いと思いました。確かに「生」よりも「愛」がぴったりはまりそうです。亡くなった彼女を浄化し、樹として新しい命を吹き込んであげるシーンでは、神々4柱がその力を貸すわけですが、死の悪魔さえも自分で与えたものでありながら彼女の死を惜しんでいるようなのは印象的でした。あくまでも各々の神は自分が人間に与えるべきことを全うしているだけに過ぎなくて、どれが尊い、どれが憎いという考えはないものなんだなぁと。ティモーンはダニエルに出会って愛した故に残酷な運命をたどるわけですし、逆をいえば、運命的悲しみを浄化するという意味では、死を与えることに愛すら覚えます。天災が起ころうとどんな幸せなことや悲劇が起ころうと、どの方向に命が運ばれていっても、それを寛容に受け止める自然の循環というか、人間の営みの小ささとそこに詰まっている命の煌めきを感じました。

今回、本番舞台は4日間6公演。それに対して稽古は2ヶ月ほど期間がありました。「アイランド」は台本自体はとてもシンプルなトラジェディーだけど、そのぶん素材そのものが際立つ舞台で、演者がその表現にかける熱量が半端なかった。河西さんに関しては本格的なミュージカルの舞台は初めてだし、発声や歌の練習には特に注力したのではと思いますが、これまでのソロ活動やアメリカ留学などなどの経験が存分に生きて繋がったのではないかなと思います。
そして、これまではアイドルということである程度守られた特殊な世界で生活していた河西さんが、劇団の皆さんと肩を並べて居酒屋で楽しんでいる写真などは、良い意味で今までになかった風景だなと感じました。偏ったヲタク故の変な言い方になりますが、プリンセスが庶民の世界に下り立った、ローマの休日的な感覚ww ライブ活動を続ける傍ら、たまにこんな機会があると河西さんのまた新たな一面を堪能することができて良いですね。楽しい舞台をありがとうございました!(/∀\*)

*1:ここに引用した概要は、アイランド公式サイトとWikipedia先生が言ってたことを参考にしてるよ\(^q^)/

*2:楽天WOMANから拝借。 - 河西智美、AKB卒業後も恋に縁なし「引っ込み思案なんです」 http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/sponichin_20170119_0104

*3:この躁鬱の落差が、現代のディズニー要素っぽさに通じるとも思います。