劇団TEAM-ODAC第28回本公演『猫と犬と約束の燈(再演)』【20180211 13:00〜】

観てきました!!あやなんが出演する舞台は必ず観ています+うめたんと中塚智実さんも出演しているということで^^私にしては席がとてもよくて、A列26番。実質2列目のどセンターでした。舞台は千秋楽を迎えましたが、以下ネタバレを含む内容なので一応注意でお願いしますね。

【脚本・演出】笠原哲平(TEAM-ODAC)
【原案】宮原耕
高品雄基(TEAM-ODAC)、松島勇之介(10神ACTOR)、國島直希、篠崎彩奈AKB48)、梅田綾乃高橋明日香、小西啓太(TEAM-ODAC)、五十嵐啓輔、二葉勇(劇団番町ボーイズ☆)、坂田隆一郎(10神ACTOR)、栗田よう子、東ななえ(TEAM-ODAC/五反田タイガー)、飯塚理恵(TEAM-ODAC/五反田タイガー)、緑川良介、haru、大橋典之、松浦正太郎、荒木雅也(TEAM-ODAC)、中塚智実軽辺るか(東京CLEAR’S) ※Wキャスト(♪)、辰巳シーナ、kyo-hey、榎木智一、伊粼央登、モロ師岡
(坂場明日香(TEAM-ODAC/五反田タイガー)、高松雪(TEAM-ODAC/五反田タイガー))

タイトル末尾に(再演)とあるだけあって、再演される価値のある素晴らしい脚本でした。ギャグがえらい尺とるなーとは思ったけどw、テーマが重たいからこれくらいがちょうどいいなと。モロ師岡さん演じる大道寺さんの幽霊のなんて、登場するだけで笑いが起こるんですからw
あとこの舞台、主題歌が存在したり、劇中歌唱があったりBGMが流れたりと結構スピーカーを鳴らす場面が多かったんですが、演者の皆さんピンマイクは無し。それでも皆さん声の通りがいいんですね。聞き取りにくいと感じることがなく変に心配することもなく、心地よく観劇できました。


主人公の美津(みつ)はバイトにも性が入らず、御香典盗みをする詐欺師。ある時から飼っていた犬太(けんた)と猫子(ねここ、うめたん演じる)と謎の手紙屋+幽霊のおっさんが夢によく現れるようになる。美津は詐欺を働く仲間の軍司とその後輩・海路の三人でもぐりこんだ葬儀屋さんの社長・大道寺睦夫のお葬式にて、その会社で働いている妹の美紀(あやなん演じる)と偶然の再会というか遭遇というかをすることになる。社長家族は問題だらけ、社員はだらけているし、挙句にはやくざの不動産に絡まれ社長愛人まで登場するという大荒れっぷり。
なにから書いたらいいのか困るレベルでいろんな人間模様が複雑に編まれているのですが、あやなん演じる美紀は、自由すぎる社員たちの中では現実味のあり、誠実で思いやりを持って働いている女性でした。久々に出会った兄の姿にものすごい驚いて、父ちゃんと母ちゃんにも連絡しないで今何してるのか、まさか詐欺なんてやってないよね?と妹とは思えないしっかりした態度でヘラヘラしている嘘つきの兄を叱責します。
美津と幼馴染でプロボクサーを目指しているゆうきは、実は美津の妹である美紀と付き合っている。久々の再会を果たして「おまえまだその歳で?」なんて美津は笑いますが、ゆうきはやるしかないと自分を隠さずにまっすぐ生きている態度がにじんでいました。でもゆうきは幼馴染の妹と付き合ってることをなかなか言い出せずにいるのですが、さすが美紀、タイミングがくるとばっさりと兄に言い切ります。

美紀「私ゆうきと結婚するの」
客席の優気さん()
美紀「文句ある?」
客席の優気さん(ないです)

〜優気さんに重大なエラーが発生しました〜
結構マジで動揺しまして、その後のこの場面の台詞まったく入ってこず、その後続いた場面はいくつか記憶からすっ飛び…こんな観劇経験は初めてでした()で、どうなったんだっけ…

モンブラン

大道寺さんと愛人の馴れ初め。嘘というよりは"言うまでもなかった隠し事"という印象を受けましたが。亡くなった彼と喫茶店で、好きで食べていたモンブランを「世界一おいしいよ」と笑顔で譲ってくれた大道寺さんの回顧の演技、グッときました。モロさん最高だよ…。自分の恋愛が叶わないことも自覚があって悩んでいて、そんな愛人のエピソードを見てしまうと、酒臭いまま遺産分けろ!と殴り込んできた彼女を簡単に厄介者扱いにできなくなってしまいますね。
この舞台の登場人物たちの関係を見ているととても限定的な人間模様の中でいろんな関係が渦巻いていて、小さな地域のあたたかさ⇔狭苦しさみたいな表裏を感じました。美津と美紀の兄妹がそれぞれ田舎から出てきていることを考えると舞台設定はある程度の都会だと思うんですが(東京だとかって劇中で言っていましたっけ?)あくまでも下町という雰囲気で、いわゆる都会/田舎の対比にはなっていなくておもしろいなと思いました。

佳境

舞台の要所要所で突然現れる浮浪の若い男。この劇の開演前BGMがずっとアコースティックな口笛だったり、路上ライブの青年(名前がわからん)が今の気持ちを音楽にしてギターを弾き始めるとその男は語りや口笛と一緒に登場するんです。そして黒い心情を詩のようにささやき始める。悪魔みたいなその人は、昔この葬儀屋を解雇されていた足利という人物だと物語が進むにつれてわかります。こんな不穏な役と素朴な音楽が呼応しているという印象のギャップにぞっとしました。

不動産屋との不穏なシーンの後でお店が火事になると、劇の登場人物は大道寺家の庭に集まります。そこで正体を明かされた足利は「みんな騒ぎ散らして強がっているけど、本当は何もできない自分が不安で嘘をついているんだ」と一人一人の本心をいびっていきます。それを「嘘をついて自分を守って何が悪い」と衝突する美津。男二人の言い合いのエネルギーはすさまじく、舞台を震源に劇場全体がぐらぐら揺れているような感じがしました。あと、足利が近づくたびにゆうきが美紀を背中の後ろにかばう様にするんですね。かばわれる美紀も心を許している感じがして、そのさりげない演技に相思相愛のカップルがにじみ出ていてとても素敵でした。

そこに、詐欺師の仲間に加わりながらも手を染めきれない東大医学部・海路がやってきて、美津が飲んでいた薬が延命薬でしかないこと、医療は進んでいるから治す方法はあるのになぜ助けを求めないのかと訴える。ずっと美津と一緒にいる軍司も「みっちゃんは俺には絶対嘘はつかない」と大泣きします。
この気持ちを揺さぶってくる熱量がぶつかり合う舞台で、客席だけでなく演者たちもうるうると涙していたのですが、海路が美津が病気を患ってることを暴露してからの美紀の動揺といったらすさまじかった…。弱弱しく潤ませていた瞳がカッと見開いて、ステージの奥にいたのがおっかなびっくりゆっくりと前に出てきて、美津に詰め寄ります。叫びと涙にまみれる壮大な場面でも美津は最後の最後まで嘘をつきます。美津がステージを下りて去っていき、その後ろ姿に美紀が一言「うそつき」と発して場が暗転。ステージ真ん中でまっすぐに兄を見つめている美紀、最高の演出でした。脚本と演出をどうやって駆け引きして舞台を作っていくのか私にはわかりませんが、この舞台において主人公の妹というポジションが大事であることがこのシーンで理解できた気がしました。

大道寺夫婦の気持ちの行き違いや日頃の行いは、いわゆる古典的な夫婦像が投影されていて胸が痛みました。傍から見るとどうしてこんな二人が結婚したんだろう?と思ってしまうものですが(自分が親にそう感じたことがある)、死んでしまった夫に本音をぶつけたくてももうぶつけることもできず、そのジレンマをみんなで共有して吹っ切れたことで、この家族は強くなったんだろうなと思います。
ミュージシャンを目指して出ていったハイテンション放蕩息子が帰ってきて実家の葬儀屋さんを手伝う場面では、「病院でじいさんばあさんがバタバタ死んでるって!」と興奮気味の姿にみんな呆れて注意しますが、葬儀屋さんは人が亡くなることをきっかけに働き、お金をもらう仕事。奥さんが「稼ぐわよ!」と一括して社員みんなで気合を入れるという場の素直な終わり方に、この舞台らしさを覚えました。嘘っていうとなんだかネガティブな印象を受けがちですが、嘘でいい顔をしながら生きることも必要なんだなと。カーテンコールでも会場物販や主題歌の配信DL、後の公演の当日券を「買ってください」と切実に宣伝していたのですが、この舞台を見終えた後だとその実直さが気持ちよかったですね。

幽霊

伏線の貼り方がうまくて、セリフの1つで物語展開が見えるようになっていました。最初の場面で、猫子が言った「猫って死期が分かるんだよね」云々という台詞で、観客があーそういうことねと悟れるようになっていました。大道寺さんの幽霊は亡くなってから火葬されるまでの間美津の目に見えるようになって、美津がお通夜で見知った愛人や奥さんに会うたびに同じ場所に居合わせて、頭を下げたりこう伝えてほしいと伝言を美津に託す。こんなことができたらいいなぁって理想とか、日頃起こるちょっと不思議な出来事のからくりが実はこんなだったらいいのになぁって想像が詰め込まれた設定だなと思いました。ベタだし重たいけど、笑いとのバランスがちょうどよかったです。
傷つきがちでも人懐っこい犬太と、いわゆるツンデレな猫子。犬と猫の対比だけでなく、人間関係の形容としても用いられていました。犬太が演劇世界の住人とじゃれあって舞台を深めていくとしたら、猫子は少し客観的で、観客と舞台の仲介をしてくれるような存在だったと思います。どちらにもどちらの良さがあり悪さがあり、両方の性(犬っぽい/猫っぽい)がかけ合わさって人間関係のバランスが保たれてるんですね。

美紀

さて、あやなん演じる美紀の話をしたい。あやなんは舞台が始まる前、SHOWROOMで「あまり出番がない」「ちょい役」などと自分の今回の出演についてあらかじめ説明していました。しかし、しかしだ。私はこれを怒りたい。なぜそんなに謙遜した前置きをしたのかと怒りたい。美紀はちょい役などではなかったからである。脚本上すばらしいポジションを与えられた、物語のキーであり嘘偽りのない優しい彩りだった。

美津と出会った当初から「お兄ちゃん!?」と声を上げ、嘘をついて生きている兄をわかって叱責するも病気と分かった瞬間になぜ親に頼らないのか助けを求めないのかを叫ぶ。美紀は終始、怒りか悲しみかを叫んでいる人物に見えました。エネルギーを使う役だと思います。もしかしたら美津が平生を装うために笑い貫いているからそうやって隠している感情を、妹役の美紀が代わりに担っていたのかもしれません。美紀には彼氏のゆうきがいますがそれよりも兄妹の絆のほうが強く見えたのはそのせいかもしれない。

最後のシーン、千秋楽はスイッチが入って大号泣だったみたいですね。私が観たのは前日の11日昼公演でしたが、この日の公演間のSHOWROOMでも結構感情を入れて演じることができたと語っていました。上演をくり返す中でどんどん美紀になりきり昇華させることができたんだなと思います。


ここがいわゆる最後のシーン。舞台上手手前でひとり立っているのが美紀

後日兄にかけた電話口で、田舎の父ちゃん母ちゃんに病気のことをまだ伝えていなかったことを叱責して(美紀から両親に話したのかな)、もっと正直になってほしいと涙する美紀。俺ってダメだよなとようやく本音をもらす美津。美紀は涙まじりに「変わろうとすれば大丈夫って自分に約束して。いつか燈(ひ)はともるよ」と一生懸命に兄を説得するけど、届いたのか届いていないのか兄はまた笑ってはぐらかす。舞台タイトルの「約束の燈」にひっかけた台詞は美紀が担っていました。家族だからこそ美紀にこの台詞が任されたのでしょう(なんて重要な役!)。

電話を切った後、座り込んで泣き続ける美紀。横では他の人物の演技が展開されている中、淡いスポットライトを浴びながら美紀の演技は続く。この存在感をひそめた時にその俳優の真贋が見えると個人的に想っているのですが、篠崎彩奈さん、やってのけていました。なんてこった。あなたいつぶりの舞台やねん(なぜ関西弁)。
兄と話して泣いたまま電話を切り、しゃがみこんで、しばらくすると立ち上がって正面を向いている。その間ずっと、俯いたり上を向いたり目元をぬぐったりして泣いている。動作にするとたったこれだけです。舞台で展開される他の演技や熱量につられて泣きを大きくすることもありとにかくずっと泣いているんだけど、感情がものすごく入っていて、ちょうど通路側の席だった私はこのまま立ち上がってステージの上にあがって美紀を演じるあやなんを、いや、あやなんが演じている美紀を抱きしめたい衝動に駆られていました。ふざけて書いてると思うかもしれませんけど、本当にそのくらい、その時の美紀は弱弱しく泣いていたのです。観客の胸の奥のやわっこいところにある、どんなに叫んでも思うようにならぬ現実という葛藤をぎゅっと握りしめられたのです。
ああ愛しい。あー愛しい。あやなん自身の小柄な感じ、身体的に華奢な雰囲気がそのまま美紀という役にはまっていた。あやなんの舞台はこれまでマジックトレードセンター、悪役令嬢後宮物語と観てきましたが、現実世界の日本を舞台にした台本は今回の「猫と犬と約束の燈」が初めてでファンタジー要素がなく演劇らしい作品だったと思いますし、篠崎彩奈にフィットした本当に良い役を演じているなぁと感慨深くなりました。

舞台の最後、両腕に犬太と猫子を抱いてソファーにくつろぐ美津の背後で、夕陽がちょうど燈のように赤く灯っていました。最後の最後、美津が自分に素直になれた証なのかなと思います。舞台はここで幕を下ろしますが、どうか彼の人生が続いてほしいなと願いました。それは私の場合、美紀の気持ちを思ってです。それもまたエゴなんでしょうけどね。


彩希ちゃんもこの日の夜公演を観に行けたようで…私も嬉しい…

千秋楽後のAKBメールではおばあちゃんの逸話を語ってくれたあやなんですが、そんな演者の経験的感情が上乗せされてさらに表現が豊かになるのもまた演劇のおもしろさだなと感じます。そんなエピソードも含めて、とても良い舞台でした。設定としてはファンタジー込みで色々ベタですが、それを感じさせない表現の豊かさがありました。再再演してほしいなぁそしてそこにまた、あやなんにも立ってほしい。そう思えるくらい素敵な舞台に出会わせてくれてありがとう、あやなん(´ω`)